2026年9月1日から4日まで、韓国・慶州(キョンジュ)市で「ASEAN+3 ユース・リトリート 2026」が開催されました。ASEAN諸国、日本、中国、韓国から集まった42名の学生が、4日間にわたり交流しながら、ASEAN+3の交流をさらに深める新たなユースプログラムを共に企画しました。
日本アセアンセンターからは、日本在住の大学生3名が参加。国籍の異なる仲間との議論や、移動中の何気ない会話、文化交流などを通じて、それぞれが「違い」と「共通点」を発見していきました。
本レポートでは、3名の学生の声を通して、彼らがこの4日間で感じたASEAN+3のつながりと、若者による交流の可能性をご紹介します。
プログラム概要
本プログラムは、三つのASEANセンター(韓国アセアンセンター、中国アセアンセンター、日本アセアンセンター)の事務総長による第22回三センター会合にあわせ、韓国アセアンセンターの主催、三センターの共催で実施されました。
韓国の大学・大学院で学ぶASEAN諸国および韓国の学生に、日本、中国からの参加者を加えた計42名が参加。国籍の異なる6名ずつの7チームに分かれ、三センターの目的に沿った新たなユースプログラムを企画しました。
4日間には、チームでの企画づくりに加え、仏国寺や石窟庵など慶州の歴史遺産の見学、各国・地域の文化を紹介するタレントショーなども盛り込まれました。最終日には各チームが三センターの代表者に企画を発表し、選ばれたチームには、今後ASEAN事務局のあるインドネシアをはじめ、日本、中国へのスタディトリップの機会が提供される予定です。

参加学生の声
何気ない一言が、チームの提案に ― 伊勢 栞奈さん(立命館大学・4年)
伊勢さんにとって最も印象に残ったのは、何気なく話した自身の経験が、仲間との対話を通じてチームの提案へと発展したことでした。熊本で地震が起きた際、ミャンマー出身の友人が現地を訪れて地域の人々と交流し、それが大きな支えになった、そんな人と人とのつながりをASEAN+3の中でも広げられたら、と伝えたところ、メンバーの一人が「有名な観光地だけでなく、熊本のように、これまで海外からあまり注目されてこなかった地域にも人が訪れる仕組みが大切では」と共感。アイデアはチーム全体の議論を経て、プレゼンテーションの提案として形になりました。
「自分の個人的な問題意識をチーム全体で共有し、一つの提案として形にできたことが、とても嬉しく、強く印象に残っています」
タレントショーでは、多くの参加者が国旗や伝統衣装を持参し、自国の文化を誇りをもって表現する姿に、自身との感覚の違いを感じたといいます。また参加前は、11カ国それぞれに異なる文化や利害を持つASEANに日中韓が加わると、共通の課題を見つけるのは難しいのではと考えていたそうです。しかし、同世代ならではの悩みや不安を共有する中で、「多様でありながらも、共感できることや、経験として重なり合う部分がある」ことに気づいたと振り返ります。
若者にできることとしては、「助けてほしい」と声をかけること、そして頼まれたら助けること。その積み重ねがつながりを生むと語ります。
今回の経験を一言で:「輪」― 人と人とのつながりや共感の輪が広がっていくことを実感したから。


「国」という境界は、思っているほど大きくない ― 川瀬 明日香さん(慶應義塾大学・4年)
川瀬さんの心に残ったのは、プログラムのワークを離れたバスでの移動中、マレーシア、シンガポール、ラオス、韓国の学生たちと将来について語り合った時間です。どんなキャリアを歩みたいか、いつ家を出るのか、結婚をどう考えるかなど、話題はそれぞれが抱える将来への悩みにまで広がりました。
「国籍も育った環境も異なりますが、同世代だからこそ、将来に対して抱えている迷いや不安には多くの共通点があり、普段意識している『国』という境界は、私たちが思っているほど大きなものではないのかもしれないと感じました」
交流を通じて、ASEANの国々が非常に多様でありながら互いに近い存在であること、そして日中韓とASEANの間にも想像以上の文化的・社会的な近さがあることに気づいたといいます。ASEANを一つのまとまりとして見るのではなく、各国の違いを知ることと共通点を見つけることの両方が大切だと実感したそうです。
今後に向けては、日中韓がそれぞれにASEANと協力するだけでなく、今回のように+3の国々が一緒になってASEANと協力する機会が増えてほしいと期待を寄せます。さらに、こうした交流の機会は大学生に限らず、小・中・高校生の段階からあってもよいのではないかと提案。固定観念が生まれる前に、相手を「外国の人」ではなく「一人の同世代」として知る経験の積み重ねが、将来の協力の土台になると語ります。
今回の経験を一言で:「違いを知るほど、互いの近さに気づいた4日間。」


学生同士の議論こそが、協力の基盤になる ― 堀川 純平さん(早稲田大学・4年)
堀川さんが特に印象に残ったと振り返るのは、各国から集まった学生たちとの議論です。なかでも、各国を代表して参加したASEANの学生たちの議論の深さや意識の高さは、想像以上だったといいます。多忙なスケジュールの合間にも、移動時間や自由時間を使い、カジュアルな話題から、育った国が異なるからこそ率直に語り合える価値観に関わる深いテーマまで話が広がりました。
4日間を共に過ごす中で、出身国ごとの気質やコミュニケーションの違いを自然と汲み取れるようになり、ASEAN+3が持続的な関係を築くには「各国の独自性を尊重し活かす姿勢が不可欠」だと感じたそうです。
参加前は、比較的緩やかな枠組みであるASEANが地域協力にどこまで実効性を持てるのか、疑問も抱いていたという堀川さん。しかし、学生同士が議論を重ねて企画を立案する機会を継続することこそが、中長期的に地域の連携力を高める基盤になると確信したと語ります。
ASEAN+3がよりつながり、協力していくために若者にできることについて、堀川さんは、時間と体力を活かして実際に現地へ足を運ぶことを挙げます。
「五感を使って現地のリアルを体験することが、先入観やネガティブバイアスを解消する第一歩になる」
今回の経験を一言で:”The youth have huge potential.”


今後の展開
国籍も文化も異なる学生たちが、4日間を共に過ごし、話し、考え、一つのアイデアを形にした今回のプログラム。3名の振り返りから見えてきたのは、違いを知ることが距離を生むのではなく、むしろ互いの共通点や近さに気づくきっかけにもなるということでした。そして、その気づきを「一緒に何かをする」という次の一歩につなげられることも、若者同士の交流が持つ可能性の一つです。
3名は今後もAJYBB(ASEAN-Japan Young Bridge Builders)の一員として、センターが主催するユースアクティビティに参加し、今回の経験を共有していく予定です。センターは、今後もASEANと日本、そしてASEAN+3の若い世代による人的交流と相互理解を促進していきます。

