ASEAN JAPAN CENTRE 日本アセアンセンター

事業報告

強みでつながり、価値を共創する ― 日本・カンボジア投資ロードショー2026 

概要

スン・チャントール副首相が率いるカンボジア政府高官代表団は、2026年6月9日から12日にかけて東京および大阪を訪問しました。本投資ロードショーは、副首相の日経フォーラム アジアの未来2026への出席に合わせて開催されたものです。ロードショーにおいては、2つの主要イベントと一連のハイレベル二国間会合を通じて、両都市で100名を超える関係者が参加しました。 

東京では、非公開のハイレベル・ラウンドテーブルにおいて、日本企業11社とCDC(カンボジア開発評議会)幹部が一堂に会しました。大阪では、カンボジア投資フォーラムを開催し、関西の企業関係者約100名に向けて対話の場を提供しました。今回の訪問では、民間外交推進協会主催の歓迎朝食会、経団連アジア・大洋州委員会会長、関西経済連合会会長への表敬訪問も行われました。本ロードショーは、日本アセアンセンター(AJC)、CDC、JETRO(日本貿易振興機構)、日本メコン地域経済委員会及び大阪商工会議所(OCCI)による共同開催、かつ、みずほ銀行の協力を得て行われました。 

東京 ― 2026年6月9日
形式:非公開ハイレベル・ラウンドテーブル
会場:帝国ホテル東京 2階
参加者:62名(日本企業11社の代表者を含む、招待制) 
 
大阪 ― 2026年6月12日
形式:公開投資フォーラム
会場:大阪商工会議所 6階 末広の間
参加者:約80名

カンボジアが提供する強み

スン・チャントール副首相は、日本の投資家が通常重視する各要素に対応する形で、カンボジアの投資上の魅力を6つの柱に沿って紹介しました。 

安定性 
1998年以来の平和と政治的継続性。コロナ禍前の20年間で平均7%のGDP成長を実現し、同期間に平均寿命は56歳から70歳へと伸びました。公的債務はGDP比約30%と低水準、インフレ率は2.5%、為替はドル連動で20年間にわたり1米ドル=4,000リエルの安定を維持しています。
ビジネスフレンドリーな政府 
世界銀行は、カンボジアをASEANで最も自由な投資制度を有する国と評価しています。外資100%出資が可能で、現地パートナーの要件はなく、利益の自由な本国送金が認められ、価格統制もありません。さらに適格投資プロジェクト(QIP)制度のもと、最長9年間の法人所得税免除が受けられます。
立地 
大メコン圏(消費者2億5,000万人)の中心に位置し、ASEANおよびRCEP(消費者23億人)の市場圏に属します。EUの「武器以外のすべて(EBA)」特恵措置は、2029年12月の後発開発途上国(LDC)卒業まで適用されます。また、米国との二国間貿易協定により関税は19%に設定されています。 
労働力 
ASEANで最も若い人口構成を有し、60%が30歳未満です。2023年11月以降、国家技術職業教育訓練(TVET)プログラムにより10万人を超える若者を育成してきました。対象となる社内研修費用については、150%の特別控除が利用可能です。
土地・インフラ 
信託に基づく外国人向けの権利設定により、50年間の土地リースが可能です。JICA(国際協力機構)支援によるシハヌークビル港の拡張(第1期:2027年第1四半期)、フナンテチョ運河(2028年完成予定)、174件・総額366億米ドルに及ぶ国家物流マスタープランが、サプライチェーン全体の運用コストを引き下げます。 
官民対話 
カンボジアは、投資家との対話のために制度化された体系的な枠組みをもっています。具体的には、年2回開催される官民対話(これまでに31回開催、第32回は2026年9月2日に予定)、官民が共同議長を務める16の技術作業部会、首相が議長を務める官民フォーラム(これまでに19回開催、第20回は2026年後半に予定)、そしてJBAC(カンボジア日本人商工会)を含む主要経済団体との持ち回り朝食ブリーフィングなどを実施しています。

カンボジア投資法に関する特別ブリーフィングの詳細はこちらhttps://www.asean.or.jp/main-site/wp-content/uploads/2026/06/Cambodia-Investment-Briefing-202606.pdf

活動内容とハイライト

【東京】日本・ カンボジア・ハイレベル・ラウンドテーブル:戦略的投資とパートナーシップ 

2026年6月9日 ・ 帝国ホテル東京

カンボジア・日本ハイレベル・ラウンドテーブルに参加した日本企業11社の代表者 

農産加工、クリーンエネルギー、製造、テクノロジー、自動車、環境サービスなど幅広い分野にわたる日本企業11社が、AJCの進行のもとで開催された非公開セッションにおいて、スン・チャントール副首相およびCDC高官と面会しました。経済産業省(METI)の羽田由美子氏は冒頭、すでに約400社の日本企業がカンボジアで事業を展開していること、また2025年10月に設立されたMETI・CDCビジネス共創チーム(BCT)が現在、日本の投資家向けの実働的なワンストップ支援窓口として機能していることを紹介しました。 

各社の議論は多岐にわたりました。米・マンゴー・カシューナッツのバリューチェーンにおける農産加工への関心、農業バイオマスから高純度バイオディーゼルを製造するクリーン燃料モデル、「メイド・イン・カンボジア」モデルのもとでの現地生産拡大計画、農業モニタリングや水管理へのドローン・AI活用などです。日本・メコン地域経済委員会による調査も、その方向性を裏付けています。すでにカンボジアに進出している日本企業の90%が、現在の事業の維持または拡大に前向きであるとされます。 

本セッションでは、投資機会としての「空白領域」も浮き彫りになりました。ある日本の産業サービス企業は、信頼できる国内の熱処理・表面処理(メッキ)事業者の登場を10年にわたり待ち続けてきた現状を、次のように語りました。 

「私たちは、日本で培ってきた技術とノウハウを活かし、カンボジアをより美しく、より豊かな国にする手助けをしたいと考えています。単に作業を依頼するのではなく、若く優秀な人材を積極的に採用し、技術と技能を移転していきたいのです。」 

― 日本企業参加者(東京ラウンドテーブルにて) 

セッションを通じて、スン・チャントール副首相は投資家からの質問に直接答え、SPS(衛生植物検疫)承認、税務行政、QIPの条件などに関する懸念を率直に提起するよう各社に促し、具体的なフォローアップを約束しました。政府と民間部門との関係について、副首相の認識は明確でした。 

「カンボジア政府にとって、民間部門は不可欠であり、最も重要なパートナーであると考えています。皆さまは我が国の経済成長のエンジンです。皆さまなくして、私たちは経済を築くことはできません。」 

― スン・チャントル カンボジア副首相 

閉会の挨拶でJETROの若林康平プノンペン事務所長は、農業の高度化、クリーンエネルギー、日本からの技術移転を、本セッションで最も明確に示された3つの投資テーマとして挙げる一方、税務行政の透明性は引き続き改善が求められる分野であると指摘しました。ラウンドテーブルは、日本側参加者とカンボジアの随行ビジネス代表団をつなぐネットワーキング・セッションをもって締めくくられました。 

【大阪】カンボジア投資フォーラム:持続可能で戦略的な分野における機会  

2026年6月12日 ・ 大阪商工会議所 

(左から)二宮康史氏(JETRO大阪)、平林国彦(ASEAN-日本センター)、森島宏光氏および廣瀬恭子氏(OCCI)、スン・チャントル副首相(カンボジア王国)、チュム・ソンリー大使(在日本カンボジア王国大使館 )、メイ・カリヤン氏(カンボジア日本ビジネス投資協会)、ヌオン・パラット知事(コンポントム州)。

カンボジア投資フォーラムは、2025年7月にAJCとCDCの共催で実施された2日間の「2025年関西カンボジア・ビジネス・ミッション」を直接の土台とする後継活動です。本フォーラムには投資対話を関西地域の企業約100名が参加し、AJC、CDC、JETRO、OCCIの共催に、協力パートナーとしてみずほ銀行が加わりました。AJCの平林国彦事務総長とJETRO大阪本部の二宮康史本部長が参加者を歓迎し、続いてスン・チャントル副首相が基調講演を行いました。副首相は、カンボジアで事業を展開する日本企業数を倍増させるという同国のコミットメントを改めて強調するとともに、投資に関する問い合わせ用にQRコードを通じて自らの執務室へ直接アクセスできる手段を提供しました。 

 AJCの平林国彦事務総長は、共有する価値観と共創を通じてパートナーシップを強化するという考えのもと、フォーラムの重要性を説明しました。JETRO大阪本部の二宮康史所長とOCCIの森島宏光会頭はいずれも共創の枠組みを支持し、OCCIは、ASEAN、とりわけカンボジアを、孤立した投資先としてではなく、統合された地域サプライチェーンの一部として捉えるべきだと述べました。 

「これは、日本の資本や投資の『投資先』としてのカンボジアを論じる場ではありません。互いに補完し合う発展段階にある2つの経済の間で共有価値を築く、『共創』についての対話なのです。」 

― 平林国彦 日本アセアンセンター事務総長 

The panel on food and agri-processing built a complete investment thesis from four perspectives: policy (H.E. Dr. Mey Kalyan, Advisor to the Royal Government), a working SEZ model (Mr. Hiroshi Uematsu, CEO, Royal Group Phnom Penh SEZ), SME entry support (Mr. Shin Yamaguchi, Director, FORVAL Cambodia), and a live proof of concept (Ms. Chiaki Watanabe, whose farm-to-chocolate model runs from Battambang to Nagoya). Dr. Mey Kalyan captured the co-creation logic at the sectoral level:  

“We want to help “made with Japan” rather than made in Japan or made by Japan.” 

— H.E. Dr. Mey Kalyan, Advisor to the Royal Government of Cambodia

食品・農産加工に関するパネルディスカッションでは、4つの視点から投資の論拠が包括的に組み立てられました。すなわち、政策(メイ・カリヤン氏/カンボジア王国政府顧問)、実際に稼働するSEZ(経済特区)モデル(ロイヤルグループ・プノンペンSEZ CEO 上松裕士氏)、中小企業の進出支援(FORVALカンボジア ディレクター 山口晋氏)、そして実例としての実証(バッタンバンから名古屋へと続く「農場からチョコレートまで」のモデルを手がける渡邉千晃氏)です。メイ・カリヤン氏は、共創の論理を次のように言い表しました。 

「私たちが目指したいのは、『メイド・イン・ジャパン』でも『メイド・バイ・ジャパン』でもなく、『メイド・ウィズ・ジャパン(日本と共につくる)』を後押しすることです。」 

― メイ・カリヤン氏 カンボジア王国政府顧問

カンボジアの食品・農産加工分野における投資機会に関するパネルディスカッション

農業はカンボジアのGDPの18%を占め、国民の3人に1人が従事していますが、国内で加工される農産物はわずか10%にとどまっています。上松氏のプノンペンSEZは、このモデルを実地で示しています。同SEZには30社の日本の製造業が進出しており、最新の進出企業であるミズノ社は、カンボジアの労働力によって製造されたボールが日本のプロ野球の厳格な品質基準を満たし得ることを確認しました。コンポントム農産加工SEZに関する個別セッションでは、600ヘクタールの工業団地と300ヘクタールの農産加工SEZが紹介されました。同地では50万人を超える就労可能な労働力により、カシューナッツ、米、キャッサバ、マンゴーを主要産品として生産可能としています。 

主要なポイント

2026年6月12日、大阪で開催されたカンボジア投資フォーラムには、関西および近隣地域から約90社が参加しました。 

01 カンボジアは耳を傾け、そして公式に答えている  

ラウンドテーブルという形式は、日本企業が現実的な懸念をありのままに提起できるよう、まさにその目的のために選ばれました。SPS承認、税務行政、QIPの条件、産業面での供給の空白について、政府は具体的に応答し、フォローアップを約束しました。これは、単なるプロモーションのイベントとは本質的に異なります。副首相は、投資家への呼びかけを率直にこう語りました。

「課題があれば、ぜひ私に教えてください。率直に、思っていることをそのままお話しください。なぜまだカンボジアに進出していないのか、あるいはすでに進出されているなら、私たちに解決してほしい問題は何か、ということを。」 

― スン・チャントル カンボジア副首相 

02 農産加工の空白は構造的なものであり、日本の強みと合致している

カンボジアの農産物のうち、国内で加工されるのはわずか10%にすぎません。加工技術、品質管理、トレーサビリティ、そして高水準市場へのアクセスにおける日本の強みは、ここに的確に合致します。これは宣伝文句ではなく、対象分野・数量・受け入れ態勢の整ったSEZが具体的に示された、需給の空白なのです。 

「日本企業はこれらの技術に非常に強みを持っており、カンボジアに加工能力を構築することは、日本や欧州の高品質食品市場にとっても利益となります。」 

― 山口晋氏 FORVAL(カンボジア) ディレクター 

03 現地で事業を営む企業こそ、最も信頼できる声である  

ミズノ社は、コストではなく労働力の質を理由にカンボジアを選びました。あるバイオディーゼル企業は、カンボジアの農業バイオマスから持続可能な燃料サプライチェーンを構築しています。J-Coreは、安価な労働力を得るためではなく、日本の環境技術を移転し、カンボジアのさらなる繁栄に貢献するために同国で登記しました。カンボジアでの12年の経験を持つパネリストは、率直にこう述べました。 

「私はカンボジアに12年間おりますが、これまで一度もネガティブな経験をしたことがありません。協力し合えれば、両国にとってより大きなビジネスチャンスを生み出せると考えています。私はそう強く確信しています。」 

― 渡邉千明氏 Choco Rico 創業者/Cacao Visionary社 COO 

04 投資家が指摘した空白こそ、先行者にとっての機会である 

国内に熱処理・表面処理(メッキ)事業者が存在しないこと、コールドチェーンの不足により収穫後に16〜40%の食品ロスが生じていること、廃棄物発電インフラが未整備であること、排水処理分野が黎明期にあることそして黎明期にある排水処理、デジタル、農産加工分野——これらは障壁ではなく、参入の入口です。ある企業は、熱処理事業者の登場を10年間待ち続けてきました。最初に動いた者が市場を獲得するでしょう。 

「私たちは、そうした企業がカンボジアで事業を始めるのを10年間待ち続けてきました。そして今なお、カンボジアにはこの種の事業を手がける企業が存在しないのです。」 

― 日本の製造業企業参加者(東京ラウンドテーブルにて) 

結び 

カンボジア・日本投資ロードショー2026は、両国の経済関係の深さと勢いを改めて確認する機会となりました。2つの都市で政府高官と日本のビジネス界を結びつけることで、本ロードショーは単なるプロモーションを超え、実質的な対話へと踏み込みました。投資家の現実的な懸念に応え、分野ごとの具体的な機会を浮き彫りにし、双方の意思決定者の間に直接の対話チャネルを開いたのです。カンボジアが2030年までに高中所得国入りを果たすという目標に向けて前進し、日本企業が多様化する地域サプライチェーンの中で信頼できるパートナーを求めるなか、本ロードショーは、互いの強みと相互の利益に立脚したパートナーシップへの具体的な一歩と位置づけられます。 

詳細のお問い合わせ、または今後のイベントへのご参加については、以下までご連絡ください:
国別戦略支援チーム(Country Strategic Support Team) info_cs@asean.or.jp 
 

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