2026年3月23日 | フィリピン・ミンダナオ島 ジェネラル・サントス市
日本アセアンセンターとフィリピン貿易産業省(DTI)との共催により、「BIMP-EAGAにおける持続可能な漁業推進フォーラム」が2026年3月23日、フィリピン・ミンダナオ島ジェネラル・サントス市にて開催されました。本フォーラムは、フィリピン・日本外交関係樹立70周年の一環として実施され、両国の長年にわたるパートナーシップを改めて示す機会となりました。日本およびフィリピンの政府関係者、業界関係者、専門家が参加し、持続可能な水産業、海洋エコラベリング、輸出対応力、ビジネス連携の可能性について意見交換を行いました。
開会セッションでは、日本アセアンセンター事務総長の平林 国彦が、サステナビリティは制約ではなく長期的なビジネスの基盤であると強調し、人と人とのつながりや、共有する海洋資源の管理における地域的な連携の重要性を指摘しました。また、在ダバオ日本国総領事の小野浩隆 氏は、日本とフィリピンの強固な海洋関係に触れつつ、持続可能な水産業が国家発展に不可欠であり、日本は引き続き地域における信頼できるパートナーであると述べました。
さらに、フィリピン貿易産業省のセフェリーノ・ロドルフォ次官は、ブルーエコノミーが生計、経済成長、レジリエンスにとって重要であることを強調し、水産企業が国際基準に適合し競争力を強化する必要性を指摘しました。加えて、ジェネラル・サントス市のロレリー・パッキャオ市長からのメッセージ(ジョセフ・アルビン・ベネラシオン氏〈エグゼクティブ・アシスタントIII〉代読)では、水産分野における同市のリーダーシップと、持続可能性、イノベーション、地域協力を通じて次世代に責任を果たす重要性が強調されました。

本事業の主なポイント
- 安定性確保に向けたトールパッキングへの転換: 企業は、物流コストの上昇や輸出需要の変動に対応するため、トールパッキングの活用を進めています。直接輸出に依存するのではなく、自社施設を他の事業者にも提供することで、稼働率の向上、遊休時間の削減、より安定的で予測可能な収益の確保につながります。
- ビジネスに不可欠なサステナビリティ: サステナビリティは選択肢ではなく、今や市場参入の必須条件となっています。特に高付加価値市場では、責任ある調達の証明が求められます。MSC認証などの取得は、小規模漁業であっても国際基準を満たし、グローバル市場での信頼性向上に寄与します。
- 品質とトレーサビリティにおける革新: 技術革新により、品質と透明性の向上が進んでいます。高度な冷凍技術により鮮度に近い品質の維持が可能となり、デジタルトレーサビリティによりサプライチェーン全体での追跡と検証可能な情報提供が実現しています。
- グローバル市場における高い基準: 日本のような市場では、鮮度、安全性、見た目において高い基準が求められます。競争力を維持するためには、量より質を重視し、厳格な温度管理と食品安全基準への適合が不可欠です。
- 海洋資源の共有と責任: 海は国境を越えてつながる共有資源であり、水産業は相互に連関した生態系に依存しています。そのため、持続可能な管理は共通の責任であり、海洋資源の保全と長期的な食料安全保障・産業成長のための協力が求められます。
本フォーラムでは、以下の登壇者によるプレゼンテーションが行われました。
- 阿高 麦穂 氏(オーバーシーズ・アグロフィッシャリーズ・コンサルタント株式会社) 阿高氏は、「持続可能なブルーエコノミー」を環境保全と経済・社会システムを統合する枠組みとして説明しました。また、MSCなどの海洋エコラベルは、トレーサビリティの向上、付加価値の創出、日本市場の調達要件への対応において不可欠であると強調しました。
- オリー・ダガラ 氏(ミンダナオ開発庁) レオ・テレソ・マグノ長官の代理として登壇し、海は国家をつなぐ共有資源であると指摘しました。また、AIを活用したマングローブ保全や、遠隔地の漁村に光をもたらすソーラーキット導入など、BIMP-EAGAの取組を紹介しました。
- 小平 桃郎 氏(株式会社タンゴネロ) 日本の水産市場におけるビジネス機会について説明し、日本の消費者は品質や見た目に非常に高い基準を求めると指摘しました。これらの厳格な基準を満たす企業は、国際市場でも高い評価を得られると述べました。
- ロザンナ・ベルナデット・コントレラス 氏(SFFAII) マグロ産業においてサステナビリティは「生き残り戦略」であるとし、小規模延縄漁業によるMSC認証取得を成功事例として紹介しました。また、漁業改善プロジェクト(FIP)を通じた操業の標準化やデジタルトレーサビリティの強化について説明しました。
- 笹原 敏明 氏(株式会社笹貿) 本市場向け水産物の品質要件として、サイズの均一性、骨の除去、厳格な温度管理などを挙げました。シシャモの手作業加工の事例を通じて、高度な技能と安定した労働力の重要性を強調しました。
- ニール・G・デル・ロサリオ 氏(Rell & Renn Seafood Sphere Inc.) 欧州市場向けのマグロロインおよび日本向けのかつお節生産を中心とした事業を紹介しました。また、魚の副産物を魚粉や魚油などの高付加価値製品に活用する統合型ビジネスモデルについて説明しました。
- 脇口 光太郎 氏(ヤマサ脇口株式会社) 130年以上にわたる伝統的なマグロ加工の歴史と、環境に配慮したはえなわ漁業への取組を紹介しました。また、電気を用いて細胞損傷を防ぐ独自の冷凍技術により、解凍後も鮮度の高い品質を実現できる点を強調しました。
- アニー・M・カブレロス 氏(Philbest Canning Corporation) 1日あたり200トンの原料処理能力を有する統合型生産体制と、缶詰、パウチ、ペットフードなど多様な製品展開について説明しました。また、地域における主要雇用創出企業としての役割にも言及しました。
- セシリア・N・ロキアス 氏(ECA Resources, Inc./Cold Store Plus) 設備稼働率の最大化と国際市場の変動リスクの軽減を目的としたトールパッキングへの転換について説明しました。また、エビのトレーサビリティにおけるブロックチェーン導入やRAISEプログラムなど、地域の近代化の取組を紹介しました。
プレゼンテーション後には、活発な質疑応答セッションおよびビジネスマッチングが行われ、日本およびフィリピンの参加企業が知見を共有し、具体的な連携の可能性を探りました。

今後に向けて
本フォーラムは、地域の水産業強化に向けて、サステナビリティ、イノベーション、市場ニーズの整合が重要であることを強調しました。今後、日本アセアンセンターは、本議論の成果や主要な示唆を踏まえ、ASEANと日本の連携を引き続き支援し、科学的根拠に基づく実質的なインパクトの創出を推進していきます。