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タイの国技ムエタイで、心と体の健やかさを提供したい【RIKAさん】

タイ人の父と日本人の母をもつRIKAさんは、タイの格闘技ムエタイの元世界チャンピオンです。現在はムエタイで行われる儀式「ワイクルー」を取り入れたフィットネスで注目を集めています。RIKAさんにとってのムエタイは、どんな存在なのでしょうか。

内気な自分を変える
きっかけになったムエタイ

―ムエタイはタイの国技なんですね。

はい、そうですね。ムエタイの発祥については言い伝えみたいなものですが、大昔の武器がない時代に、自分の手や足や肘など、生まれ持った体を武器にして戦う手段だったという話があります。

そしてムエタイがスポーツとして発展していく過程でルールができ、全部で8個の技に絞られました。タイでは体育の授業でも教えられているようです。

数多くのチャンピオンベルトを手にしてきたRIKAさん

―RIKAさんのお父様も元ムエタイの選手ですね。

そうですね。父はタイで選手として活動し、日本ではムエタイのジムを開きました。そのため、父から英才教育を受けてきたんじゃないかと周囲からはよく言われますが、意外とそうでもなくて。子どもの頃は、ムエタイにあまり興味がなかったんですね。私は人前でしゃべるタイプでもなくて内気だったし、運動も全然できなくて。体を動かすこと自体にもあまり興味がなかったんです。

―意外ですね。いつから始められたんですか?

始めたのが16歳あたりで、ちょっと遅めです。父が東京でムエタイのジムを開いたんですが、そのジムの生徒たちが、もう少年少女のように楽しそうにしていて。大人たちがこんな夢中になってやるってすごく楽しいんだろうなと思った記憶があります。スポーツをやっている人っていいなって本当に心から思った体験でした。

それにちょうど年頃で、ちょっとかわいくなりたいとか痩せたいとかいう気持ちもあり、内気だけど私も変わりたいと思ったのがムエタイを始めたきっかけです。
私がムエタイを始めたことは、父もうれしかったと思います。

1本目のチャンピオンベルトを獲得し、父のセンチャイさんと喜びを分かち合う

―RIKAさんが12歳の時に、ご家族でタイから日本に来られましたが、日本で暮らしていく中でご家族にとってムエタイはどういう存在でしたか?

タイから日本に来た時、父の年齢が40代半ばだったと思います。タイではムエタイ選手として知られていましたが、異国の地である日本では誰にも知られていない状況でしたし、あとはカルチャーギャップのようなものがあったと思うんですね。

その中でできることは、やっぱりムエタイだったのだと思います。ムエタイのトレーナーになってジムを開いてチャンピオンを何人も出し、ムエタイがまだよく知られていなかった日本に「タイのムエタイ」を根付かせたのはすごい功績だと思います。

父のムエタイへの愛をすごく感じるし、それによって私たち家族を養ってくれていたわけですよね。ムエタイに誠実に向き合った結果として、私たちも日本で不自由のない生活を送ることができた。本当に父とムエタイのおかげですね。

ムエタイに息づく
目上の人を敬うタイの気質

―ムエタイには試合前に踊る儀式「ワイクルー」がありますが、RIKAさんのワイクルーは美しいと評判ですね。

ありがとうございます。ワイクルーは試合前に、恩師や両親に対して感謝の気持ちを表す儀式です。タイは目上の人を敬う意識が強い国ということもあり、技を授けてくれた先生、そして産み育ててくれた両親などに対しての感謝の気持ちがワイクルーに込められています。ムエタイのリングの上で気持ちを整えるための時間、というのがワイクルーの最大の意味なのかなって思います。

ワイクルーは選手の所属ジムごとに動きの特徴がありますが、自分でもプラスアルファのアレンジを入れて美しく見える工夫をしたりしています。

選手時代、試合前にワイクルーを行う姿。観客を楽しませるのも選手の大事な仕事という想いを持ち、美しいワイクルーで魅了した。

―RIKAさんはワイクルーを取り入れたフィットネスジムを運営されていますね。

はい。ワイクルーの動きは淡々とリズムを刻むのが特徴で、それを取り入れたところが他のフィットネスとの大きな違いだと思います。リズムを刻む動きは、筋力を鍛えるだけでなく、精神的に安定する作用もあるらしくて。試合前にワイクルーをして精神を落ち着かせるという、昔の人の知恵って本当にすごいなと思います。ムエタイだけでなく、日常でも大事な何かの前に行う運動として適しているなと個人的には思っています。

―ジムの生徒さんにはワイクルーのそういった意味合いや役割を伝えているんですか?

めちゃめちゃ伝えています! やっぱり皆さんもそういうところに共感してくださいます。ワイクルーは恩師や両親への感謝だけでなく、もう少し皆さんの日常の近く、たとえば身近にいる方、子どもでも、パートナーでも、お友達とか職場のみんなに対しての感謝でもいいんです。その感謝の気持ちって幸福度を高める効果もあると聞きます。何かに感謝をすれば自分自身が幸せな気持ちになり、それが伝染して自分の周りがより豊かになれるんじゃないかなと思っています。

―ワイクルーは心にも体にもいい影響があるんですね。

ムエタイというと身体の強さというイメージがあります。もちろんフィジカルも大事ですが、それだけなく、精神の強さにもつながっています。ムエタイとワイクルーを通して少しでも生きやすくなるように、そして自分らしくあるためのちょっとした勇気とか、そういうものを持ってもらえればなと。やっぱり心と体ってつながっていますからね。

コロナ禍に、オンラインレッスンで家でもできるワイクルーのフィットネス化を思い立ち考案。ジムの生徒は女性が多く、年代は30代〜60代と幅広い。

ワイクルーフィットネスは
楽しい人生のきっかけ

―今後の展望を教えて下さい。

ワイクルーフィットネスは新しいタイプのフィットネスなので、より多くの人に届けるにはもう少し時間がかかるかもしれませんが、まずは身近な方たちから喜んでもらえればと思います。ムエタイを始めた16歳のときの私みたいに、自分も変わりたいなとか、人生を楽しみたいなとか、そういう思いがある方はぜひ一度、ムエタイとワイクルーに触れてみてほしいです! きっと物の見方が広がるきっかけになると思います。

あとは、まだタイのムエタイを知らない方とか、格闘技なんて全然考えたことがないという方にこそ届けたいなと思っています。これからも、そういう方たちに近づけるような活動をやっていけたらなと考えています。

RIKAさん

元ムエタイ選手であるタイ人の父を師匠とし、2004年(16歳)から本格的にムエタイを始める。2007年にプロテストに合格し、2010年に本格的に女子ムエタイ選手としてプロデビュー。ムエタイウォリアー女子ライトフライ級初代王者、サヴァンベガストーナメント優勝、WMC世界女子ライトフライ級王者、WBCアジア女子ライトフライ級王者など数々のタイトルを獲得。2015年日本人初の年間MVPとなり同年に選手引退。ムエタイのトレーナー、審判として活動し、2020年から【ワイクルーフィット】を開発・監修する。現在は恵比寿にジムを開店してレッスンの傍ら、レフリー・ジャッジの活動やイベントの主催などを行っている。

パーソナルムエタイジム R-FIT:https://rikafit.net/staff/

取材・文/室橋織江 写真提供/RIKA

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