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The people of ASEAN-Japan

ソーシャルメディアでインドネシアと日本をつなぐ【坂本絢悠さん】

ソーシャルメディアは人々のコミュニケーションや情報共有の方法を大きく変え、今や異なる国の人々がつながり、文化的な理解を深めるうえで欠かせないプラットフォームとなっています。コンテンツクリエイターで坂本絢悠さんは、堪能なインドネシア語を生かし、日本語や日本文化に関するコンテンツをインドネシア人を中心とした多くのフォロワーにソーシャルメディアを通じて発信しています。

― インドネシアやインドネシア語に興味を持ったきっかけは?

英語以外の言語を学びたいと思い、東京外国語大学でインドネシア語を専攻しました。当時は発展途上国の躍進に興味があり、該当する地域として東南アジアがすぐに頭に浮かびました。その中でも、インドネシアは人口が多く、若者の人口も多いため、今後大きな成長が期待できる国だと思いました。観光業が盛んで、特にバリ島が日本人観光客に人気があることにも惹かれました。また、私はAKB48をはじめとするアイドルが好きなこともあり、JKT48の本拠地であるインドネシアを身近に感じました。

留学中よく訪れていたジャカルタのJKT48劇場

― インドネシアでの生活で印象に残っていること、体験したことを教えてください。

ガジャマダ文学の文化学部・観光学科に留学していたとき、国内のさまざまな地域から来たインドネシア人の学生たちと仲良くなり、強い絆が生まれました。年末の休暇では、友人の里帰りについていくこともありました。その後、インドネシアの島々を巡る旅に出ましたが、これも楽しい経験でした。留学中、ジャワ島西部、中部、東部をはじめ、バリ島、スマトラ島、カリマンタン島、スラウェシ島、ラジャアンパット諸島の主要な観光地を訪れることができました。

旅行で訪れたラジャアンパット

― インドネシアでの生活は坂本さんにどんな影響を与えましたか?

インドネシアでは、人々が多様な宗教と共に生きていて、そこから学ぶものが多くありました。特に印象的だったのは、ご両親を説得することに葛藤しながらも、自らの意志で改宗した年下の友人のエピソードです。インドネシアでは、若いうちから自分の人生を真剣に考え、大きな決断をする若者が多いことに驚きました。自分の人生に責任を持ち、自分の道を切り開くことの大切さを教えてくれました。

― インドネシア人と日本人の一番の違いは何だと思いますか?

私を含め、多くの日本の若者は、良い意味でも悪い意味でも、生き急ぐ傾向があると思います。ペースを落とさずに進もうと必死で、常に忙しいと言われています。一方、インドネシアに留学していたとき、人々がもっとリラックスして生活していることに気づきました。インドネシアの人たちは「Santai, santai! (リラックス、リラックス!)」とよく言いますよね(笑)。

ガジャマダ大学の友人

ソーシャルメディアを通じて、人々が多様性への理解を深め、コミュニティ間の垣根を取り払う手助けをしたい

 ソーシャルメディアで日本語や日本文化に関するコンテンツを作成するようになったきっかけは?

私がコンテンツ制作を始めたきっかけは二つあって、一つは、ジョグジャカルタでの留学中に経験した言語面と生活面における苦労です。日本の大学で学んだインドネシア語と現地の日常会話の違いに慣れるのはとても大変でした。さらに、ジャワ語の混じった言語もあり、苦労しました。また、インドネシアでの生活が始まる前に、必要な情報を収集できなかったことを後悔しました。

二つ目のきっかけは、日本語の習得に励んでいたインドネシア人の友人たちの存在です。友人たちの使っていた日本語の教科書を見ると、日本語が少し不自然だったり、説明がわかりにくかったりするんです。自分のインドネシアでの経験、また日本語を学ぶインドネシアの友人たちの姿から、インドネシア人の日本語学習者を支援するために、私にできることはないかと考えるようになりました。日本語が好きなインドネシア人のために日本文化や日本での生活に便利な情報を提供したいと思うようになりました。

留学から帰国したのは、2019年の夏。2020年のパンデミックの中、コンテンツ制作を開始しました。コロナ禍で旅行に行けなかったり、人に会えなかったりする中、自分のインドネシア語力の低下やインドネシア人とコミュニケーションが取れなくなることに不安を感じていました。人とつながりたいと思った時、ソーシャルメディアがツールとして優れていると思い、ソーシャルメディアを使って発信をするようになりました。

 コンテンツ制作者としての苦労は?

最大の難関は、更新のペースを保つことです。継続的にコンテンツを制作するには、モチベーションと時間が必要です。正直なところ、いつもうまくいっているわけではありません。幸いなことに、私には手を貸してくれる友人が何人かいて、なんとか続けています。

自宅でSNS素材を撮影する様子

 坂本さんのコンテンツは、日本とインドネシアの友好・協力関係の促進にどのように役立っていると思いますか?

インドネシアは日本と密接な関係にあると思われていますが、近年は日本の影響力が著しく低下しています。日本はアニメで世界的に有名ですが、日本語や日本文化への関心度は低下しているように見受けられます。私は、両国の架け橋となり、双方の文化交流を促進するために積極的に活動していきたいと思っています。自分のコンテンツを通じて、日本の情報をたくさん提供し、日本語や観光スポットなど、日本文化の魅力を伝えていきたいです。

インドネシアの民族衣装バジュクバヤ

 日本語や日本文化についてもっと知りたいと考えている方々に向けて、アドバイスをお願いします。

ソーシャルメディアで交流しましょう!日本語の学習教材は以前より増えてきていて、無料で提供されているものもたくさんあります。また、私を含め、インドネシアが好きだとソーシャルメディアで公言している日本人は大勢います。そういう人たちとコミュニケーションをとるのは簡単なことだと思います。皆さんも積極的にソーシャルメディアを活用し、同じ趣味を持つ人とつながってみてはいかがでしょうか?

 今後のプロジェクトやコラボレーションについて、読者と共有したい計画があれば教えてください。

私はこれまで主に日本語学習に特化したコンテンツを発信してきました。今後は、日本語に重点を置きつつ、より多くの日本留学を目指すインドネシア人学生をサポートすることが目標です。また、日本に住むインドネシア人にとって有益な情報源をもっと増やしていきたいと思っています。

坂本 絢悠 さん

1年間のインドネシア留学を経て、2021年東京外国語大学卒業。会社員としてフルタイムで働きながら、週末に「Kepo Jepang」(日本について知りたい)の中心人物としてコンテンツ制作を行う。日本語とインドネシア語の言葉遊びをして、「おはようパギー」「ありがとうございマーチ」などの造語も使う。

取材・文/Dina Faoziah 写真提供(現地写真)/坂本絢悠

登録されているカテゴリー
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