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料理に国境なし!マレーシア料理から学ぶこと【古川 音さん】

2023/02/02

Food & lifestyle

マレーシア滞在をきっかけに、マレーシア料理の魅力に目覚めた編集者・ライターの古川 音さん。「マレーシアごはんの会」を主催し、日本帰国後も多彩な活動を続けています。聞いているだけでお腹が減ってくる、マレーシアのおいしい話をお届けします。

知識ゼロからのスタートで現地マレーシアで就職!

―マレーシア滞在中に出版社で働かれていたそうですね。

夫の赴任に同行してマレーシアで暮らし始めたのですが、滞在中に日本人向けに現地の生活情報を発信するフリーペーパーの出版を行う会社の募集を見つけたんです。日本でも女性誌の編集や執筆をしてきたので、チャレンジしてみました。

海外旅行にはたびたび行っていましたが、当時はマレーシアについて知識ゼロからのスタートでした。取材先のお店に一人で伺って話を聞いたり写真を撮ったり。しだいにマレーシアの食文化に魅せられていきました。

マレーシアは英語が通じやすい国ですが、多様な民族の方が住んでいて、それぞれ得意な言語が違います。当時、私は英語を使って生活するのに不慣れだったのですが、「気持ちで通じるものだな」と知りました。みんな他の民族、言葉が通じない人に対して優しいです。自分も似たような経験をしていて、相手の気持ちがわかるというか、経験しているんだなという感じがしますね。

取材中の古川さん 写真提供:Faiz Zeo

「朝点心、昼カレー、夜ナシゴレン」
多様性こそ食の楽しみ

 取材を通して知った食文化を教えてください。

日本と異なるのはお酒の習慣。日本では食事とお酒を一緒に楽しみますが、マレー系のイスラム教徒の方は、宗教上お酒は飲みません。中国系の方は食中酒よりも、食事を終えてからバーなどで飲むことが多いようです。

マレーシア料理は近隣の国々の料理とよく似ています。陸地で繋がっているASEAN諸国の食文化は、国境で分かれないものも多くあります。例えば、日本ではシンガポール料理と言われているチキンライスや、インドネシア料理として紹介されているナシゴレンは、マレーシアでもよく食べられている料理です。地域によって違いがあり、北はタイの料理と近く、酸味があってさっぱりとした味わい。インドネシアに近いジョホールバルに行くと濃厚な味が好まれます。また、インドネシアやタイに比べると、全体的にあまり辛くない料理が多いようです。それぞれ特有の食文化があって、違うことをみんな誇りに思っていますね。

古川さんが主宰する「マレーシアごはんの会」のホームページ https://malaysianfood.org/。高級店から気軽なコーヒーチェーンまでマレーシアの食文化を紹介しています。

都市ごとにも特徴があって、例えば首都クアラルンプールは物価が高めですが、各地方の料理から本格的な西洋料理までバラエティーが豊か。第2の都市ペナンは屋台文化が盛んで何を食べても安いし、おいしいです。特に海に囲まれているのでシーフードは新鮮で、中国系の方がやっている店の麺も人気です。全国的にいえるのは、多民族が暮らしていて本格的なカレーの店の隣に点心の店があるような土地なので、「朝は点心、昼カレー、夜ナシゴレン」のような感じで外食は楽しいです。

 暑い国なので、特有の食習慣がありそうですね。

日本では、朝、昼、晩の3食が普通ですが、マレーシアは1日5、6回など、食事の回数が多めです。7時、10時、12時、15時、18時、22時など、少しずつ何度も食べる方が少なくありません。マレーシアは暑いので、このような食べ方が気候に合っていて、健康を保つための秘訣かもしれません。店でも「食べたい分だけ自分で盛る」というセルフ方式にしているところも多く、理にかなっているように思います。

人気店は相席が基本
おじいちゃんの代から通う常連も

 いつも行く決まった店はありますか??

クアラルンプールでいつも行くのが、ユッキー・レストランという個人経営の老舗喫茶店です。人気店なので、1人で行くと他のお客さんと相席することが多いのですが、店のオーナーが心地よく過ごせるように、相席するお客さん同士を紹介してくれたりします。交流が広がりますし、こっちはライターなので取材のネタにもなります。「移住してきたんですか?」のように話しかけてくれるのは、嬉しいことです。

地元の人や旅行者で賑わう老舗喫茶店ユッキー・レストランの店内

出会ったばかりの人同士が食事を楽しんでいる光景を見ていると、「こんなふうにさまざまな民族の方が昔から一緒に食卓を囲んでいたんだ」と考えさせられますし、歴史も含めていいなと思います。「おじいちゃんの代から3世代で常連だよ」なんて方も珍しくありません。親に連れられて来た子どもが店の味を家族の味としてとらえ、その子が結婚して子どもができたらまた連れてきて、といった流れですね。店側も子から孫へと受け継いでいくから、関係はずっと続くのでしょうね。

古川さんが主宰する「マレーシアごはんの会」では、マレーシア料理と食文化の紹介や、料理教室などのイベント情報も発信しています。

古川 音 さん

ライター、マレーシアごはんの会主催、WAU編集人。

女性誌の出版社勤務を経て、2005~09年、マレーシアの首都クアラルンプールに滞在。日本人向け情報誌の編集を4年間手掛ける。“マレーシアごはんを通して人類がどのようにしてこの世界とこの時代を築き上げたのかを実感しよう“をモットーに、ローカル屋台飯からマレーシア人の家庭料理まで取材し、撮影も担当。著書に『マレーシア 地元で愛される名物食堂』(Gakken)

  • 「マレーシアごはんの会」ホームページ:  https://malaysianfood.org/
  • Twitter:@otofurukawa
  • Instagram:@malaysia_food

取材・文/木村悦子 写真提供(現地写真)/古川音、Faiz Zeo

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