主なポイント
- 意識改革とパートナーシップ:サステナビリティは「自然からの分離を映す鏡 」とも言える廃棄物を「新たな産業への架け橋」としてとらえた共感と協働から始まる。
- 産業廃棄物リサイクルによる循環化:アミタホールディングスは、産業廃棄物を代替原料や燃料へと変換する技術により、CO₂排出削減と100%リサイクルの実現している。
- 統合型廃棄物管理技術:J&T Naza Alam Murniは、産業汚泥の水分を減らし、熱エネルギーを再利用するマレーシアの統合的な「スケジュール廃棄物エネルギー化」システムを紹介した。
- アップサイクルと社会的エンパワーメント:sareeUPは、廃棄された繊維を創造的にアップサイクルし、責任ある消費を促進するとともに、自社が女性たちへの社会参画の機会を提供していることを紹介した。
- 素材科学におけるイノベーション:Conture Concrete Labは、多層プラスチックやタバコの吸い殻など処理が難しい廃棄物を、研究とデザインを通じて独自の質感を持つ高付加価値コンクリートへ転換できることを示した。
- 教育と法施行:若年層への教育と不法投棄への厳しい取り締まりを含む、公共意識の向上と政策の実施が必要であることが強調された。
- 協業と誠実さ:真のサーキュラーエコノミーの実現には、協業と誠実さが不可欠であり、サステナビリティの取り組みが単なるマーケティングにとどまらず、科学的根拠に基づく意義ある成果につながることが重要である。
日本アセアンセンターは、2025年10月17日、クアラルンプール・コンベンションセンター(KLCC)にて開催された「日本・マレーシア環境ウィーク2025」の公式セッションとして、「再生材の未来:廃棄物から高付加価値材への日ASEAN企業連携」をテーマに対話セッションを開催しました。本セッションは、マレーシア貿易開発公社(MATRADE)との共催で行われ、日本、マレーシア、ASEAN諸国から専門家や企業関係者が参加し、リサイクル、資源循環型ビジネスモデル、持続可能なイノベーションに関する取り組みや見解を共有しました。
開会にあたり、林国彦事務総長は、サステナビリティへの歩みは「共感と想像力に根ざした心と心のパートナーシップ」であると強調しました。また、廃棄物は「終わりではなく、新たな産業への架け橋」として捉えるべきだと述べました。

(写真提供:海外環境協力センター[OECC])
討論セッションでは、マレーシア貿易開発公社(MATRADE)シニアディレクターのS・ジャイ・シャンカル氏がモデレーターを務めました。同氏は「廃棄物は問題ではなく、想像力を待つ資源である」と述べ、効果的な解決策には、商業的な合理性と適切な技術、そして環境・社会目標への真摯なコミットメントが必要であると強調しました。
セッションでは、以下の専門家による主要なプレゼンテーションが行われました。
- 銘苅 洋氏(アミタホールディングス株式会社、日本):難処理廃棄物をブレンド技術によってセメント製造用の代替原料(ARM)または代替燃料(AF)に転換し、100%リサイクルを実現するとともにCO₂削減に貢献する産業廃棄物リサイクル技術を紹介しました。
- マシュラフ・ファイズ・ビンティ・マズラン氏(J&T Naza Alam Murni Sdn Bhd、マレーシア):統合型廃棄物管理施設および「スケジュール廃棄物エネルギー化(SWTE)」システムを紹介し、連携、資源効率、循環的フローの重要性を強調しました。また、廃棄物排出者に対し、有害成分の削減を呼びかけました。
- パドマニ・スピア氏(sareeUP創設者、マレーシア):廃棄されたサリーを再利用して実用的な製品を生み出すパドマニ・スピア氏(sareeUP創設者、マレーシア):廃棄されたサリーの再利用から実用的な製品を生み出す繊維製品アップサイクルへの取り組みを紹介し、社会的エンパワーメントや責任ある消費の促進、教育および規制強化の必要性を訴えました。
- フェブリアン・トリチャヨ氏(Conture Concrete Lab創設者兼代表、インドネシア): 2023年および2024年にインドネシア・グッドデザイン賞および日本グッドデザイン賞を受賞した同氏は、プラスチック、マスク、たばこの吸い殻などの産業・家庭廃棄物を高付加価値のコンクリート製品へと変換する素材革新の事例を紹介しました。また、「実験的に裏付けられた倫理的なプロセスを重視し、表面的なサステナビリティに偏らないことが重要だ」と述べました。
各講演の後には活発なパネルディスカッションと質疑応答が行われ、参加者はASEANと日本がどのように協力して廃棄物から経済的・社会的・環境的価値を生み出せるかについて意見を交換しました。
銘苅氏は「我々の使命は持続可能な社会の実現である」と述べ、また「日本の厳格なリサイクル基準はいずれマレーシアや他のASEAN諸国にも浸透するだろう。それは時間の問題だ」と付け加えました。
さらに、マシュラフ・ファイズ・ビンティ・マズラン氏は、責任ある廃棄物管理と将来を見据えたアプローチの重要性を強調し、「持続可能な取り組みは、自らの意識と環境のために正しいことを行う決意から始まるべきだ」と述べました。「私たちは自らのあり方を定義すべきです。地球は私たちが借りているだけのものであり、未来の世代のためにある。」と語り、外部からの期待にとらわれず、循環型経済への革新と進化を促しました。

パドマニ・スピア氏は「商業的な実現可能性こそが持続可能性を前進させる原動力である」と強調し、アップサイクルによる「循環の閉鎖」に過度に依存することは、根本的な課題である過剰消費の問題を見落とすと警鐘を鳴らしました。「過剰消費は重大な問題です。私たちは規制を必要としています」と述べました。
さらに、フェブリアン・トリチャヨ氏は「現代の問題には現代的な解決策が必要であり、持続可能性はマーケティング上の言葉であってはならない。それはデザインと研究における誠実さの表れであるべきだ」と語りました。
また、センターは10月15日から17日まで展示ブースを設け、参加者に対してASEANと日本における持続可能性、イノベーション、包摂的成長を促進する取り組みを紹介しました。日本の小林史明環境副大臣およびマレーシア天然資源・環境持続性省のチン・トゥー(YBhg. Datuk Dr. Ching Thoo a/l Kim)事務総長もブースを訪問しました。

日本アセアンセンターはこのような双方向対話型セッションで得られた成果を引き続きフォローアップし、ASEANと日本の持続可能な協力関係を継続的に推進に注力して参ります。