日本アセアンセンターは、2025年9月11日から12日にかけてマレーシア・クアラルンプールで開催された第8回アセアン・インクルーシブ・ビジネス・フォーラム(AIBF 2025)および、同月11日から14日に実施された「アセアン・インクルーシブ・ビジネス&ソーシャルエンタープライズ・ショーケース2025」に参加及び出展支援をしました。
これらの取り組みは、今年のアセアン議長国であるマレーシアが掲げるテーマ「包摂性と持続可能性」のもとで実施され、政策立案者、起業家、開発パートナー、投資家らが一堂に会し、包摂的ビジネスを通じた持続可能な開発、地域の中小企業のエンパワーメント、そしてグローバル・バリューチェーンにおける包摂の促進を議論しました。
第8回アセアン・インクルーシブ・ビジネス・フォーラム(9月11–12日)

本フォーラムは、マレーシア起業・協同組合開発省(MECD)、経済協力開発機構(OECD)、国連アジア太平洋経済社会委員会(UNESCAP)、およびアセアン事務局の共催により開催され、アセアン地域におけるインクルーシブ・ビジネスの将来像を形成する政策と実践について活発な議論が交わされました。
日本アセアンセンターの 平林国彦 事務総長 は、「セッション1:アセアンにおけるインクルーシブ・ビジネスの機会の拡大」にパネリストとして登壇しました。モデレーターを務めた国連アジア太平洋経済社会委員会(UNESCAP)の Jonathan Wong 氏をはじめ、ベトナム財務省の Nguyen Tung Anh 氏、インド・テランガーナ州政府の Jayesh Ranjan氏、タイの Phuree Smittinet 氏(Café Amazon for Chance)、マレーシアの Sasibai Kimis 氏(Earth Heir)らが意見を交わしました。登壇者たちは、アセアンが持続的かつ包摂的な成長を実現するうえで、インクルーシブ・ビジネスの変革的な可能性をどのように活用できるかについて議論しました。
平林国彦 事務総長は発言の中で、アセアン域内におけるインクルーシブ・ビジネス推進において日ASEAN協力が[yk1] 果たす重要な役割を強調しました。特に、日本アセアンセンターが実施する ImpactLink: ASEAN–Japan Social Entrepreneurs Hub および ImpactLink: ASEAN–Japan Women Social Entrepreneurs Workshop on Digitalization and Investment 2025 の取り組みを紹介し、30名の女性中小企業経営者がメンタリングやデジタルソリューション、投資準備スキルを通じて強化されたことを説明しました。 また、研究活動や ImpactASEAN Series、女性起業家を対象としたラウンドテーブルなどを通じ、センターがインパクト投資と女性の経済的エンパワーメントを推進してきたことを紹介しました。今後は、日本の技術力と資本、アセアンの起業家精神とイノベーションを融合させることにより、社会に変革をもたらす持続可能なビジネスモデルの拡大を目指すべきであると述べました。
アセアン・インクルーシブ・ビジネス&ソーシャルエンタープライズ・ショーケース2025(9月11–14日)

フォーラムのサイドイベントとして開催された本展示会は、クアラルンプールの サンウェイ・ピラミッド・ショッピングモール(メイン会場)およびフォーラム会場(ミニショーケース)にて実施され、アセアン域内外の政策立案者、投資家、消費者を対象に、インクルーシブ・ビジネスおよび社会的企業の取り組みを紹介しました。参加企業は、革新的なビジネスモデルを発信するとともに、政策担当者や投資家、バイヤーとの交流を通じて市場アクセスを拡大しました。
中でも注目されたのは、センターが支援する ImpactLink: ASEAN–Japan Women Social Entrepreneurs Workshop on Digitalization and Investment 2025 を修了した7名の女性社会起業家の参加者です。彼女たちは、研修で培った知識、メンタリング、投資準備スキルを実際のビジネス機会に結び付け、研修成果を市場での実践へと発展させました。この展示は、ワークショップでの学びを現実のビジネス連携へと昇華させる場として機能し、インクルーシブ・ビジネスが社会課題解決にどのように貢献できるかを示す成功例となりました。

下の列:カンボジア、インドネシア、ラオス、フィリピン
出展した女性起業家(国別・企業名):
- カンボジア: Putheary Sem氏(Espass)
- インドネシア: Elisabet Purnamasari氏(Koperasi Produsen Musi Mushee Indonesia)
- ラオス: Dalayphone Sayasithsena氏(SAYA Brand)
- マレーシア: Vatsala Nair Manoharan氏(Moms Village Asia)
- ミャンマー:Stacie Phyo氏(Pace Forward)
- フィリピン: Betty More氏(Healthy Sweets Mindanao Corporation)
- タイ: Getthip Hannarong氏(Zero Waste YOLO Co., Ltd.)
彼女たちの事業は、環境に配慮した消費財、女性協同組合、健康食品、ゼロウェイストの取り組み、デジタル教育、電子商取引など多岐にわたります。これらの企業は、アセアン地域における女性によるビジネスの強靭さ、創造性、そして社会的使命感を体現し、インクルーシブ・ビジネスが喫緊の開発課題に対して具体的な解決策を提示できることを示しました。また、マレーシア起業・協同組合開発省のDato’ Sri Ramanan Ramakrishnan 氏 および事務総長YBhg. Dato’ Sri Khairul Dzaimee bin Daud氏 が会場を訪れ、出展者の取り組みを高く評価しました。
日ASEAN協力の実践

本展示は、日ASEAN協力が「対話」から「実践」へと移行する場となりました。日本アセアンセンターの代表団は、平林国彦 事務総長 をはじめ、プログラム実施担当のKatrina Navallo とPreechaya Kittipaisalsilpa が参加し、センターの実施パートナーである Proficeo Consultants(ImpactLink ワークショップ実施機関)とともに、出展者のブースを訪問しました。研修の成果を直接確認し、参加起業家が学びをどのように事業に反映させたかを視察しました。
参加した女性起業家たちは、ImpactLink を通じて身につけたデジタルツールの活用力、投資準備スキル、戦略的アプローチを実践に移し、政策担当者や消費者、潜在的な投資家との対話に自信をもって臨む姿を示しました。この展示は、単なる企業展示の場にとどまらず、日ASEAN協力が起業家に現実のビジネス環境でインパクトを拡大する力を与えていることを体現する場となりました。ワークショップから展示へのこの一連のプロセスを通じて、日本アセアンセンターは、包摂的かつ持続可能な成長に向けた日ASEAN連携の強化 という使命を改めて確認しました。同センターは、女性起業家の能力強化や中小企業の発展支援、そして社会的インパクトと経済的価値を結び付けるエコシステムの構築を通じて、アセアン地域において企業が「繁栄と社会的変革の原動力」となる未来の実現に貢献しています。
お問い合わせ先:
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