はじめに
日本アセアンセンターは、フィリピン貿易産業省(DTI)傘下のフィリピンデザインセンターと共催で、2025年1月13日にフィリピン・マニラにおいて、「サステナブル包装の未来をひも解く:フィリピンにおける循環型デザインの取り組み(Unwrapping Sustainable Packaging with Promotion of Circular Design in the Philippines)」と題したワークショップを、日本とフィリピンの循環型経済における協力促進を目的とした「第2回日本フィリピン環境ウィーク」の関連イベントとして開催しました。このイベントには、日本アセアンセンターと包装、ラベリング、製造業などの産業界および政府機関、学術機関、NGOなどから70名以上が参加しました。
目的および目標
「第2回日本フィリピン環境ウィーク」という特別な機会を活用し、本ワークショップでは「包装における循環型デザインがどのようにサステナビリティを推進できるか」に焦点があてられ、日本の循環型デザインの経験とベストプラクティスを共有し、それをフィリピンのサステナブルな包装・ラベリングシステムに適用する方法を検討しました。議論は、拡大生産者責任(EPR)に関する日本とフィリピンの両国における状況、新たな包装トレンド、民間セクターが直面する課題と機会、そして持続可能な未来を共創するためのビジネス実践などに焦点をあてて行われました。
活動内容
ワークショップは、フィリピンデザインセンターの歓迎の挨拶から始まり、フィリピンにおけるサステナブル包装および循環型デザインの重要性を強調し、プラスチック包装に起因する固形廃棄物の大量発生という深刻な環境問題に直面する同国にとって重要な発展分野であると指摘しました。さらに、フィリピン企業は、持続可能または環境配慮型の包装の導入を真剣に検討すべきであり、消費者の意識が高まっている昨今、行動が求められていると述べました。続いて、日本アセアンセンターが開会の辞を述べ、フィリピンデザインセンターとの長年の協力関係や、地域協力を通じた環境面での持続可能性の推進に対する強いコミットメントを再確認しました。


最初に、日本包装技術協会は、「日本におけるプラスチック廃棄物のリサイクル」について発表し、「1971年 廃棄物の処理および清掃に関する法律(Waste Management and Public Cleaning Law)」および「1995年 容器包装リサイクル法(Containers and Packaging Recycling Laws)」の2つの関連法を紹介しました。さらに、「1992年 PETボトルの自主設計ガイドライン(Guidelines for Voluntary PET Bottle Design)」、そして「Japan Packaging Contest 2024」の受賞作を例に、包装・ラベリングの最新技術トレンドを紹介し、「Tokyo Pack 2026(2026年10月14〜16日開催予定)」への参加を促しました。
次に、 フィリピン企業PCX Solutionsが、「フィリピンにおけるEPRの動向と民間部門の課題(Trend and Private Sectors’ Challenge towards EPR in the Philippines)」をテーマに講演しました。PCX Solutionsは、企業や政府に対してプラスチック責任に関する助言を行い、「プラスチック汚染削減基準(PPRS/Plastic Pollution Reduction Standard)」を管理する非営利団体です。同企業は、フィリピンのEPR制度と、企業がその法制度にどのように対応すべきかを説明し、プラスチックが自然界に流出しないよう、循環型経済への転換を加速する必要性を強調しました。


最後に、味の素フィリピン社より「持続可能な未来の共創(Co-Creating a Sustainable Future)」というテーマで講演が行われました。同社は、フィリピンにおけるサステ
ナブルな取り組みを牽引する企業のひとつとして、調味料製品に自然素材かつ再生可能な紙を使用した持続可能な包装への転換を紹介しました。また、SariCycle® Programについても紹介され、社会のすべてのメンバーの包摂性と循環性がプラスの成果をもたらす例として示されました。このプログラムでは、小売店が消費者から回収したプラスチック包装を正しく分別しリサイクルセンターに持ち込むことで「環境ポイント」を獲得でき、日用品との交換や公共料金の割引に利用できます。この活動は、収集されたプラスチックが確実にリサイクルまたは適切に処理されることで、廃棄物削減に貢献しています。


続いて、3名の有識者からの講演を基に、「型破りな発想で築く:責任あるイノベーション(Outside the Box: Where Innovation meets Responsibility)」と題されたサステナブル包装デザインに関するワークショップへと移行しました。このワークショップは、Kindmind Experience Designの共同創設者兼代表であるAbi Mapua氏によってファシリテートされ、同氏はデザインの力を通じて、参加者が協働しながら環境負荷、ユーザー体験、そして循環型経済の原則に対応する製品のソリューションを構想・設計することを促しました。
主なポイント
1. 日本はプラスチックリサイクルにおいて世界をリードしており、特にPETボトルのリサイクル率は80%を超える優れた実績を持つ。
2. 循環型デザインによる包装ソリューションは、リサイクル紙や森林認証紙、バイオプラスチックなどのサステナブル素材を用いることで、プラスチック使用量の削減を優先している。こうした包装は、ブランドイメージの向上や消費者体験の質の向上にも寄与する。
3. フィリピンの拡大生産者責任法は、プラスチック廃棄物の削減を目的とした重要な法制度であり、総資産が1億ペソを超える大企業および中小企業に対して、製品ライフサイクル全体における環境負荷への責任を求めている。対象は、使い捨てプラスチック、硬質容器、プラスチックバッグ、ポリスチレンなどを含む。
4. 今回のワークショップは、日本における包装リサイクルの現状や最新の包装トレンドに関する貴重な知見を提供した。今後、こうした日本の制度や仕組みをASEAN地域、特にフィリピンに導入する際には、地域の実情や文化的背景を踏まえた調整が必要である。
今後に向けて
本ワークショップは、フィリピンを含むASEAN諸国と日本企業とのさらなる対話と連携の必要性を強調するものでした。日本アセアンセンターの目指すところの一つとして、日本企業とフィリピン間での持続可能な包装および環境ビジネス分野における相互協力や共創を促進し、循環型デザインを取り入れたフィリピン製品が、日本やその他の国際市場に持続可能な方法で輸出される機会を拡大することをサポートして行きます。