2025年5月25日、 ASEAN事務局と国際機関日本アセアンセンターは大阪・関西万博「モビリティとコミュニティの未来」テーマウィークの一環として、特別対話・ディスカッション「私が望む未来:ASEAN、日本、そしてその他地域に広がる、スマートで持続可能かつ包摂的なコミュニティ」を大阪・関西万博テーマウィークスタジオにて開催しました。本イベントは、スマート技術、持続可能性、そして包摂性を中核とした未来のコミュニティのあり方を構想・発信することを目的として行いました。
イベント概要
民間企業、社会的企業、そして政府間機関の分野から、業界リーダーやサステナビリティの専門家が登壇しました。
- 開会・閉会挨拶
ASEAN事務総長 カオ・キムホン閣下
ASEANの持続可能な都市化戦略、スマートシティネットワーク、循環経済フレームワークといった既存の地域プラットフォームを通じて、イノベーションと持続可能性を促進するASEANの取り組みを強調し、これらの。取り組みは、ASEAN共同体ビジョン2045にも合致していると述べた。

- 基調講演
吉田勝彦氏(ミネベアミツミ株式会社 取締役 社長執行役員 COO & CFO )
精密工学とイノベーションが持続可能かつ包摂的な社会の実現をどのように後押しできるかを紹介。カンボジアやタイにおける太陽光発電事業など、エネルギー効率向上に向けた具体的な取り組みを共有。


- パネルディスカッション
(モデレーター:日本アセアンセンター事務総長 平林国彦 博士)
登壇者:- 吉田勝彦氏(ミネベアミツミ株式会社 取締役 社長執行役員 COO & CFO )
- ロビン・タカシ・ルイス氏(myMizu 共同創業者 )
- ジューン・シェリル “チャイ”・カバル=レヴィーリャ氏(メトロ・パシフィック・インベストメンツ社 CFO、CRO & CSO )
- ジェローム・バラダス氏(ASEAN生物多様性センター 公共交流部門 部長)
- 特別企画:ASEAN New Generation ショートフィルムアワード受賞作品上映
ASEANの若者たちがそれぞれの見たい「世界」を表現したショートフィルムを紹介。

主な考察ポイント
1. 全体テーマ
未来のコミュニティを、スマート技術、持続可能性、包摂性を組み込むことで設計しようというビジョン。
2. 協力とパートナーシップ
政府、企業、地域社会が連携し、持続可能な取り組みをスケールアップするには、セクターを超えた協働が不可欠。(バラドス氏)
3. 持続可能性は成長の基盤
持続可能性は単なる選択肢ではなく、社会経済的成長と回復力の基盤であり推進力であると考えられている。企業は持続可能性を中核事業に積極的に組み込んでいる。
4. 技術の役割
最先端技術とスマートイノベーションは、ミネベアミツミの半導体製造の経験に見られるように、都市部や農村部を活気あるインクルーシブな空間に変えることに大きく貢献している。AIとデジタル技術は持続可能性を促進する役割を果たすが、精密製造における中核的なアナログ・ノウハウのデジタル化については課題が存在する。
5. 課題と機会への対応
気候変動、デジタルデバイド、不平等といった課題には、人間の福祉と回復力に焦点を当てる必要があると強調した。物理的・気候的リスクは、特にフィリピンのような災害の多い地域におけるインフラ・プロジェクトにとって大きな課題であるが、同時に緩和と適応の機会でもある。ビジネスの利益を環境保護、特に生物多様性保全と一致させることは、ACBとMPICがASEAN地域の生物多様性保全を促進するために提携している「ASEANビジネスと生物多様性イニシアティブ」のようなイニシアティブを通じて取り組まれている課題である。(レヴィーリャ氏)
6. 自然に根ざした解決策(Nature-Based Solutions)
生態系と経済的な持続可能性の両方を達成する有望な解決策には、在来樹木の植林などの生態系の回復、持続可能な農業、循環型経済、持続可能な都市、グリーンインフラなどが含まれる。生物多様性をビジネス、農業、健康などの主要セクターに統合することで、生物多様性を主流化することは極めて重要である。
7. 若者の参画
未来の課題解決には、若者の想像力と創造力が不可欠。センターのASEANショートフィルムアワードようなプラットフォームがクリエティビティを促進。
8. 起業家的マインドセット
myMizuのような社会的企業にとって、限られた資源で創意工夫し、臨機応変に適応することが、成長と持続可能なソリューションの拡大の鍵となる。失敗は学びの機会と捉える姿勢が重要。
9. 包摂性と多様性の尊重
すべての人を取り残さないという理念のもと、先住民族、地域社会、女性、若者などの多様なステークホルダーの参画が不可欠で、昆明・モントリオール生物多様性枠組やASEAN生物多様性プランのような枠組みの基本である。多文化的な環境は、異なる視点をもたらし、チームを強化する資産と見なされる。
10. ASEAN-日本協力の深化
包括的戦略的パートナーシップを通じて、持続可能な開発、デジタル変革、生物多様性保護、グリーンインフラといった分野での協力が拡大。スマートで持続可能かつ包括的な未来に向けて、さらなる交流と共創の可能性に期待。
11. 個人の行動が未来をつくる
望ましい未来の実現は、関心を持ち、行動に移す個人から始まる。小さな一歩を踏み出し、仲間を集め、経験から学ぶことが求められる。
本イベントは、スマートで持続可能かつ包摂的なコミュニティの実現には、経済、環境、社会、ガバナンスを包括する全体的かつ連携的なアプローチが必要であることを強調しました。すべてのセクターと個人が、それぞれの役割を担い、共に未来を築いていくことが求められています。

2024年度日本アセアンセンター主催のショートフィルムコンテスト「アセアン・ショートフィルム・アワード」の受賞作品10本を上映。

(以下、上映順)
- KANTO (Director: Alfonso) (Philippines)
- Distance (Director: Mattiphob Douangmyxay) (Lao PDR)
- Replay (Director: Franky Arrocena) (Philippines)
- Magiging Okay Ang Lahat / Everything’s Gonna Be Okay (Director: Patrick Baleros) (Philippines)
- The Assignment (Director: Yusril Mahendra) (Indonesia)
- Hobby (Director: Lance Christian Gabriel) (Philippines)
- The Outside Life Balance (Director: Somsavath Sygnavong) (Lao PDR)
- The Grilled Rice (Director: Xokananh) (Lao PDR)
- Dear, Bapak… (Director: Adam Zainal) (Malaysia)
- Frames of Tomorrow (Director: KIM VIPUTH) (Cambodia)
閉会
ASEAN事務総長のカオ・キム・ホーン閣下は、閉会ビデオメッセージの中で、地域の環境、社会、経済の持続可能性に向けた行動を呼びかけ、イベントは締めくくりました

また、参加者には桜の花びらの形をした紙が配布され、それぞれの立場で持続可能性への取り組みにどのように貢献したいか書いたものをボードに張り付けました。コメントは以下の通り、作品にまとめられました。本イベントのハイライトを凝縮したビジュアル・サマリーとインタラクティブ・アートワークは原田理世氏と田中弓乃氏が担当しました。