マウンテイン・フィールド・コンサルタント社の山田健一郎代表取締役はいち早く統一ラオス投資奨励法について以下のように速報している。
2004年10月に改正国内投資奨励法と改正外国投資奨励法として公布され、国内企業と外国企業の管理を区分してきた両投資法が、2009年6月22日から7月9日に開催された第6期7回国民議会にて正式にラオス投資奨励法として一本化されることに合意が得られた。ラオス国民議会では2名の国会議員が本法に反対、1名が棄権している。巻末にラオス投資法の英文ドラフトを添付。今後修正が行われる可能性があるので注意されたい。本法の施行は2010年にずれ込むとと予想される。
本改正による主なポイントは以下の通りである。
- WTO加盟を視野に入れた内外資本の差別の撤廃
- 2005年企業法と現行投資奨励法との矛盾是正
- より明確なインセンティブの供与と投資申請方法・担当機関の明確化と申請期間の迅速化
- 民間企業による経済特区開発における法的根拠とインセンティブの供与
- 病院・教育機関投資への特別な恩典の供与
- 農産物加工投資へのコンセッション費の免除
- 25億キープ以上(約29万ドル)の投資額の外国人投資家への宅地使用権の供与
- 投資の形態
-
- 契約による業務提携
- 内外資本合弁企業(外資は最低でも10%以上の出資義務)
- 国内もしくは外資による投資
- 投資事業の種類
-
- 一般事業
- 企業法のネガティブリストに記載されず、コンセッションを伴わない事業
- 投資申請は商工省ワンストップ・サービス・ユニット(OSS)に申請、企業法に基づき企業登録を行い、企業登録証を受ける。
- 外国資本の総資本金は10億キープ以上とする。
- 投資認可期間は無限とされる。
- コンセッション(大規模な土地取得)を伴う事業
- コンセッションを伴う事業は計画投資事務所のOSSへ申請
- 計画投資省はコンセッション証と投資証明書を発行。
- コンセッション認可期間は事業規模、条件による、別途法律で規定される。
- コンセッション事業リストは別途規定される。
- 政府や地方政府の社会経済開発計画事業
- 政府・地方政府の社会経済開発計画事業とは、地方開発やインフラ整備、農業加工、工業、サービス等の事業
- 計画投資省OSSへ申請
- 社会経済開発計画のリストは別途規定される。
- 経済特区開発事業
- 経済特区、輸出加工区、工業区、観光区、保税区、IT開発区、国境経済区、その他開発。
- 投資家は計画投資省OSSに申請
- 計画投資省から政府に提議し、政府のみが認可可能。
- 計画投資省は経済特区設立コンセッション証と投資許可証を発行
- 経済特区開発事業リストは別途規定される。
- 期間:99年以下とし、国会の承認により延長が可能。
- 一般事業
図表 48 事業の種類と申請先、ライセンス、期限等
事業の分類 | 申請先 | ライセンス | 期限 | 備考 |
---|---|---|---|---|
一般事業 | 商工省系OSS | 企業登録証 | 無限 | 非ネガティブリスト 外国資本の総資本金は10億キープ以上 |
コンセッションを伴う事業 | 計画投資省系OSS | コンセッション証、投資許可証 | 最大99年 (延長可能) |
|
政府や地方政府の社会経済開発計画事業 | 計画投資省OSS | 社会経済開発計画事業投資許可証 | ||
特定経済区開発事業 | 計画投資省OSS、政府による認可 | 経済特区設立コンセッション証、投資許可証 | 最大99年 (延長可能) |
経済特区、輸出加工区、工業区、観光区、保税区、IT開発区、国境経済区 |
(出所)山田健一郎作成
■代表事務所
- 外国の法人がラオス国内に代表事務所を設立する場合、計画投資省のOSSへ申請し5日以内に審査を受ける。
- 代表事務所は将来の投資を目的として親会社の情報収集の為で、事業活動を行う権利を持たない。
■外国法人の支店
- ラオスにおける外国法人の支店の開設は計画投資省OSSへ申請し、5日以内に支店設立証明書の発給を受ける。
- 支店の開設が認可されるのは、銀行、国際コンサルタント、国際航空業務のみである。
- 国内法人がラオスで一般事業のために支店を開設するには、商工省OSSへ申請する。
- コンセッションを伴う事業の場合は計画投資省へ申請する。
企業法の動き
国民議会は2005年10月の会期中に1994年の事業法を改正し、企業法として承認した。企業法は、ビジネス開始手続きの簡略化、ネガティブ分野の明確化やワン・ストップ・サービスにより登録の自動化をもたらすと期待された。しかしながら現行の国内・外国投資奨励法との矛盾(特に企業登録ワン・ストップ・サービスが投資奨励法では計画投資省・計画投資委員会(CPI)とされ、企業法では商工省とされる点、投資奨励法ではポジティブリストであるのに対し、事業法ではネガティブリストである点など)が指摘されてきた。その後首相令No.37/PMO(2006年10月24日付)にて事業法履行細則が定められた。
企業法公布後、2007年2月14日付事業登録事務所設置に関する商工大臣合意(No. 0225/ MIC1)に基づき商工省国内商務局において事業登録事務所(Enterprise Registry Office・・・ERO)が設置され、事業法遂行の為に事業登録を行っている。2ここでは屋号の調査、コード化、合弁会社、会社の契約書の受理、National Databaseの構築、事業登録書の発行を担当するとしている。現在ネガティブリストは2008年4月28日付けネガティブリスト受理に関する首相令(No.68/PM)3により鉱物開発や運輸、保険事業を中心に60種以上がリストアップされている。
(出所)山田健一郎作成
■奨励分野
- 農業:無農薬農業・畜産、新品種・新畜産品種の拡大、農業生産物加工
- 工業:新製品生産、新エネルギー生産、ハイテク製品生産、有機テクノロジー生産、高技術利用、生産への最新技術の利用、新技術調査、労働を多く使用する工業、最新式機械類への投資、大規模工業投資、工芸開発、伝統工業、情報通信サービス、生態系・環境保全投資、調査・研究投資、インフラ建設開発事業
- サービス業:学校建設、病院建設、競技場建設、工業・観光に便宜を与えるインフラ開発投資、金融機関投資、ラオスの伝統訳開発投資
■法人税優遇政策
奨励を受けることができる事業について、政府は党の政策や社会経済開発計画、各セクターにおける戦略計画に基づき3地域に分類する。
- 奨励第1地域:
- 投資に対して未だ便宜を与えない社会経済インフラ整備がない地域で、この地区への投資は最大限の奨励を受ける。
- 奨励第2地域:
- 投資に対して社会経済インフラ整備がある程度進んでいる地域で、中程度の奨励を受ける。
- 奨励第3地域:
- 投資に対して社会経済インフラ整備が進んでいる地域で、低い奨励を受ける。
- 奨励第1地域では事業の重要性に基づき各期最大10年間の法人税免除を受けることが出来、その後は税法が規定する比率に従う。
- 奨励第2地域では事業の重要性に基づき各期最大7年間の法人税免除を受けることが出来、その後は税法が規定する比率に従う。
- 奨励第3地域では事業の重要性に基づき各期最大3年間の法人税免除を受けることが出来、その後は税法が規定する比率に従う。
*法人税免除の期間は企業が事業を開始した日から計算。
*植林、新製品生産、技術調査研究については企業が収益を出した日から開始。
*採鉱事業、電力エネルギー事業においては法人税免除は適用されない。
法人税の免除の他に、企業は以下の関税やその他の税金について優遇を受けることが出来る。
- 自らの事業により得た純利益を用いて事業の拡大に投資した場合における次年度の法人税の免除
- 設立時や拡張時における生産のための原料、機械・道具類、車両の輸入関税の免除。ただし事業の遂行時においては生産に直接使用する車両の関税免除を受けることが出来る。
- 輸出のための一般製品の輸出時における輸出関税の免除。天然資源、天然資源からの製品については関係法律に従う。
- 鉱物・エネルギー開発におけるコンセッションを伴う事業については、関税やその他の税の免除の優遇を受けることが出来る(道具、資材、車両、機械類の輸入など)
*あらゆる化石燃料の輸入については輸入関税の免除は適用されない。
■特例優遇
- 政府が基準を規定する最新式病院や学校設立の投資については、政府はさらに5年間の法人税免除期間を付加する。
- 農産物加工への投資については、加工工場や原料生産のための土地のリースもしくはコンセッション費は以下の場所別に免除される。
- 奨励第1地域:15年間のリース・コンセッション期間免除
- 奨励第2地域:11年間のリース・コンセッション期間免除
- 奨励第3地域:7年間のリース・コンセッション期間免除
■関税、法人税優遇の供与方法
- 一般事業について、商工事務所は企業登録証の中で政府が規定する奨励リストに基づき記載する。
- コンセッションを伴う事業、もしくは社会経済開発計画事業については、計画投資事務所が、政府の奨励リストに基づきコンセッション証に記載する。
- 財務機関が、企業登録証やコンセッション証に規定される投資奨励政策を遂行する。
- 生産に直接利用する車両の輸入税の免除については別途法律で規定する。
- 非直接利用である機械、車両の輸入免税については、年次輸入計画に記載し、財務機関に対し申請し許可を取らなければならない。
■その他の優遇
25億キープ以上(29万ドル)の投資額の外国人投資家は住居用の土地利用権が与えられるが、800m2以下4とする。
図表 49 統一投資奨励法における恩典
奨励地域区分 | 区分の説明 | 法人税免除 | ||
---|---|---|---|---|
原則免除期間 | 最新式病院や学校設立への投資 | 農産物加工への投資 | ||
第1 | インフラ 未整備 |
最大10年間 | +5年の法人税免除 | 15年間のリース・コンセッション期間免除 |
第2 | 中程度の インフラ整備 |
最大7年間 | +5年の法人税免除 | 11年間のリース・コンセッション期間免除 |
第3 | インフラ完備 | 最大3年間 | +5年の法人税免除 | 3年間のリース・コンセッション期間免除 |
(出所)山田健一郎作成
1 http://www.moc.gov.la/Bussiness_registration/CHAPTER%20I/0225.pdf(PDFファイル:124KB)
2 ラオス語のEROサイト
3 http://www.moc.gov.la/Bussiness_registration/negative%20list.pdf(PDFファイル:428KB)
4 脚注4.土地法によると宅地の利用権は一人当たり800m2までの所有が認められている。