投資家には、設立から成長、成熟、拡張までのビジネスサイクルに一貫して競争力のある投資優遇措置を用意している。投資優遇措置は、2001年投資優遇措置令によるもので、次のような免税措置が用意されている。
1. パイオニア産業
パイオニア産業にあてはまるのは、
- 公益に適い、
- 過去にブルネイ国内において適切な経済スケールで展開されておらず、
- パイオニア産業として好ましく、パイオニア製品として特定されているもの
免税期間
パイオニア産業の免税期間は生産開始日より始まり、次の期間にわたる。
固定資本支出 | 免税期間 |
---|---|
50万ブルネイドル以上250万ブルネイドル未満 | 5年 |
250万ブルネイドル以上 | 8年 |
拡張 | 1回3年で計11年まで |
ハイテク・パークに立地 | 11年 |
ハイテク・パークに立地する拡張 | 1回5年計20年まで |
投資優遇措置
- 法人税免除。パイオニア産業は30%の法人税が免除される。
- 機械、装置、部品、付属品、建設部材の輸入税が免除される。
- 原材料の輸入税が免除される。
- パイオニア企業はパイオニア製品製造に必要な原材料でブルネイ国内で調達できないものについては関税が免除される。
- 欠損金繰越・引当金
2. パイオニア・サービス企業
パイオニア・サービス企業に該当する企業は
- 公益に適い、
- 以下の活動に従事する企業である。
- 実験、コンサルティング、研究開発(R&D)を含む、エンジニア・サービスまたは技術サービス
- コンピュータを使った情報サービスおよびコンピュータ関連サービス
- 工業デザインの開発・製作
- レジャー、レクリエーションの提供に関連したサービス・活動
- 出版サービス
- 教育の提供に関連したサービス
- 医療サービス
- 農業技術に関連したサービス・活動
- 倉庫施設の提供に関連したサービス・活動
- 展示会および会議の組織・管理に関連したサービス
- 金融サービス
- ビジネス・コンサルタント、ビジネス・マネジメント、専門的職業のサービス
- ベンチャー投資資金活動
- 高速大量輸送システムの運営または管理
- 競売専門会社によるサービス
- 私立博物館の維持・運営
- 大臣が認めたその他のサービス・活動
免税期間
パイオニア・サービス企業の免税期間は、事業開始日より8年間で、最長11年まで延長可能である。
投資優遇措置
- 法人所得税の免除
- 損失および引当金の繰越
3. ポスト・パイオニア企業
ポスト・パイオニア企業とは、
- 1975年5月1日以降のパイオニア企業、
- パイオニア事業を行う企業またはパイオニア・サービス企業、
- 輸出指向型企業で、免税期間が終了する直前まで輸出指向型業としてパイオニア事業を行っていた企業。
免税期間
ポスト・パイオニア企業の免税期間は、事業開始日より6年間で、最長11年まで
投資優遇措置
- 法人所得税の免除
- 損失の控除
- 資本的支出控除と損失の調整
4. 既存事業の拡張
認可製品の生産または増産を目的とした新規の資本支出を目指す企業はいずれも、大臣に拡張証明書の交付を申請することができる。
拡張証明書の取得要件は以下のいずれかである。
- 生産設備を購入のためにB$1,000,000超の新規資本支出を行う
- 新規資本支出額がB$1,000,000以下、B$500,000超の場合は、当該企業の全生産設備への投資総額が、価値にして当初費用から30%以上の増加となる
新規資本支出額 | 免税期間 |
---|---|
B$1,000,000以下 | 3年 |
B$1,000,000を超える | 5年 |
延長 | 1回につき3年、最長15年まで |
投資優遇措置
法人所得税の免除
5. サービス企業の事業拡張
拡張しているサービス企業の免税期間は以下のいずれかである。
- 事業拡張開始日から
- 以前に同様の資格を取得し優遇措置を受け、現在免税期間中である場合、その免税期間終了後、直ちに新規免税期間に入る。
免税期間は11年。延長は1回につき5年までで、最長20年までである。
免税期間
期間 | |
---|---|
AとB | 11年 |
免税期間の延長 | 1回につき5年、ただし合計で最長20年 |
投資優遇措置
法人所得税の免除
6. 輸出向け生産
- 輸出向け製品を製造しているあらゆる企業、または農林漁業に従事し、生産物の全部または一部を輸出する全ての企業に対して諸条件に従って大臣が証明書を発行する。
- すべての輸出企業は、輸出向け製品または産物の輸出売上が次の様に予見される場合、会計期間を具体的に示すこと。
- 輸出製品または輸出産物の輸出売上高が総売上高の20パーセント以上である。かつ
- 輸出製品または輸出産物の輸出売上額が20,000ドル以上である。
免税期間
期間 | |
---|---|
パイオニア企業以外 | 8年 |
パイオニア企業 | 6年 |
延長 | 合計で最長11年 |
輸出企業が資本支出を行った、または行う予定の額が以下のいずれかであること:
- 5000万ドル以上である
- 5000万ドル未満しかし50万ドル以上である
- 上記のいずれかに加え、輸出企業の支払済み資本金のうち40パーセント超を市民または移民法(Chapter 17)(ブルネイ法第17条)に基づいて滞在許可証を付与された個人が所有していること。また、輸出企業はブルネイ・ダラサラームの経済や技術開発を促進、発展することが求められる。
免税期間
期間 | |
---|---|
パイオニア企業以外 | 15年 |
パイオニア企業 | 15年 |
投資優遇措置
- 法人所得税の免除
- 機械類、機器、部品、付属品、構造物にかかる輸入税の免除
- 原材料にかかる輸入税の免除
7. サービスの輸出
資格要件 以下のいずれかのサービスに従事していること:
- 建設、流通、設計、エンジニアリングを含む技術サービス。
- 技術的問題、取引、ビジネスに関連したあらゆるコンサルティング、ビジネス・マネージメント、監督、顧問サービス。
- 機械・機器類の組み立て、原材料、部品、機器の調達。
- データ処理、プログラミング、コンピューター・ソフトウェアの開発、電気通信、その他コンピューター関連サービス。
- 会計、法務、医療、建築サービスを含む専門的職業サービス。
- 教育・研修サービス。
- 大臣が認めたその他のサービス。
免税期間
サービスの輸出に関する免税期間は、開始日から最長11年。
免税期間の延長は一回につき3年を超えない。ただし合計で最長20年。
投資優遇措置
- 法人所得税の免除
- 損失および引当金の控除
8. 国際取引
企業が以下のいずれかの活動に従事していること:
- 適格な製品又はブルネイ・ダルサラーム国製品の国際貿易を行い、これらの製品・産物の輸出売上高が単独でまたは組み合わせて年間で300万ドルを超えているか超える見込みである。または
- 適格な商品の中継ぎ貿易を行い、これらの商品の輸出売上高が年間で500万ドルを超えているか超える見込みである。
免税期間
当該企業に証明書が発行されれば国際取引の免税期間は、開始日から8年。
投資優遇措置
法人所得税の免除
9. 生産設備への外国からの融資
非居住者の貸し手に支払われる利息に対しては20パーセントの源泉徴収税がかかる。ただし以下のすべてに該当する適格外国融資に対して政府は免税を認める場合がある。
- 融資の用途が生産設備を購入するものである。
- 信用枠が外国の融資会社との融資契約を通して得たものである。
- 融資額が20万ドル以上
免税期間
外国の融資会社との融資契約による。
投資優遇措置
適格外国融資の利息に対する源泉徴収税が免除となる。
10. 投資引当金
経済、技術、その他プロジェクトの公益性を条件に、以下の固定資本支出のいずれの場合においても投資引当金が適用されうる。
- あらゆる製品の製造または増産
- 専門的なエンジニアリングや技術的サービスの提供
- R&D活動
- 建設工事
- 国内の産業廃棄物のリサイクル処理
- パイオニア・サービス企業としての条件を満たす活動
- ブルネイ・ダルサラームの観光産業(ホテル以外)の促進
この項に基づいて発行される証明書には投資開始日が明記されなければならない。
投資引当金
企業がプロジェクト提案をする場合、承認を受けたプロジェクトの投資引当金は特定の割合となる。固定資本支出が生じた場合、その引当金が承認を受けたプロジェクトにおける各特定項目の固定資本支出に対し、100パーセントを超えることはない。
- 期間は、投資開始日から最長5年。
- 観光産業を促進する場合、投資開始日から最長11年。
投資優遇措置
法人所得税の免除
11. 倉庫保管とサービス提供会社への優遇措置
- 倉庫保管設備の設置または改良に200万ドル以上の固定資本支出を行おうとするあらゆる企業が対象となる。この倉庫保管設備は全部または主として当該企業が販売または輸出する製品の保管、配送に使用されるものである。また処理手続きや関連サービスの提供も含まれる。
- ブルネイ・ダルサラームの非居住者へ、全面的、部分的な技術的・エンジニアリング的サービス、およびその他大臣が官報で通達する特定サービスの提供を目的とする。
免税期間
倉庫保管企業の免税期間は開始日から途切れることなく続くが、最長11年。延長は一回につき3年、最長で計20年。
投資優遇措置
法人所得税の免除
12. 新技術を開発・導入する企業
ブルネイ・ダルサラームで法人格を取得したすべての企業で、製品、加工処理、サービス、に関連してブルネイで新技術を開発したい、または使用したいと考えている企業は、以下の条件に基づいて優遇措置の申請ができる。
- その技術が導入されるとブルネイ・ダラサラームの経済や技術開発が促進、発展する。
- 新技術に関わる企業は技術企業として適用される期間中はずっと支払済み資本金のうち30パーセント以上を市民または移民法(Chapter 17)(ブルネイ法第17条)に基づいて滞在許可証を付与された個人が所有していること。
投資優遇措置
適格な持ち株会社の税控除
13. 海外企業への投資およびベンチャー・キャピタル
- ベンチャー企業の証明書申請と発行:
-
- ブルネイ・ダルサラームで法人格を取得した全ての企業で、製品、加工処理、サービスに関連してブルネイ・ダルサラームで新技術を開発したい、または使用したいと考えている企業は、規定の書式で大臣にベンチャー企業の認定申請をすることができる。
- 当該技術が導入されるとブルネイ・ダラサラームの経済や技術開発が促進、発展すると大臣が認めた場合、証明書が発行される。
- 技術や海外企業に投資する企業の証明書申請と発行:
-
- ブルネイ・ダルサラームで法人格を取得し、かつ居住企業で、製品、加工処理、サービスに関連した新技術を開発中、または使用中の海外企業に投資したいと考えているすべての企業は、規定の書式で大臣に、技術に投資する企業である旨証明してもらう申請をすることができる。
- 投資対象の技術は、それが導入されればブルネイ・ダラサラームの経済や技術開発が促進、発展するものである。
- ブルネイ・ダルサラームで法人格を取得し、かつ居住企業で、ブルネイ・ダルサラームで使う技術を海外の企業から取得したい、または自社の持ち株会社や子会社が海外企業の技術にアクセスできるようにするために海外の企業に投資したい、と考えているすべての企業。
投資優遇措置
適格な持ち株会社に対する損失の控除
ブルネイ法第35条(所得税法)に基づくその他の優遇措置
- 投資家の基本的権利や保証
- 投資家が資本を本国へ送金することに制約はない。投資から得た利益と配当金の送金に制限はない。
- 損失の繰越
- ある期間に発生した取引、ビジネス、商売の損失は、その期間の法定所得と相殺することができる。
- 免税期間中の資本引当金の繰越
- 免税期間終了時まで未使用の資本引当金は、ポスト・パイオニア・ステータスの収益に対して適用できる。
- 課税可能な法人所得からの控除(原価償却引当金)
- 減価償却は経費として控除される代わりに、有資格支出に対する資本引当金によって償却される。納税者は、下記のような計算に基づいて減価償却引当金を請求することができる。
- 産業用建物
産業用建物は、10%の初年次償却の対象になり、償却が完了するまで資本経費の2%という定額法で年次償却される。 - 機械類や工場
機械類や工場は、20%の初年次償却の対象となり、資産の損耗に対する減価償却が認められている。年次償却は定率法で行われ、その率は資産の性質により年3%から25%の間である。
- 産業用建物
- キャピタルゲインの免税
- ブルネイ・ダルサラームにはキャピタルゲイン税がない。
- その他の免税
- ブルネイ・ダルサラームには輸出税、売上税、給与税、製造税がない。
指定パイオニア産業及びパイオニア製品
以下は、パイオニア産業及びパイオニア製品の指定を受けた産業・製品である。
パイオニア産業 | パイオニア製品 |
---|---|
1. 飛行機ケータリング・サービス* | 航空会社向け各種食品 |
2. セメント最終加工工場* | セメント |
3. 医薬品 | 各種医薬品、ビタミン、錠剤、シロップ |
4. アルミ壁タイル | アルミ製壁タイル、その他装飾用タイル |
5. 圧延工場 | 鉄鋼、棒鋼、山形鋼、U字鋼等の製造・加工 |
6. 工業用化学品* | 石油その他産業用の各種化学品 |
7. 造船所* | 船舶の修理及び保守 |
8. ティッシュペーパー | ティッシュペーパーおよび台所ナプキン |
9. 繊維* | 各種衣料 |
10. 缶詰、瓶詰、包装* | 各種缶詰、瓶詰、包装食品 |
11. 家具 | 木製、藤製、組立式家具 |
12. ガラス | 板ガラス、産業用ガラス製品、光学/写真用ガラス、照明/装飾用ガラス製品等 |
13. 窯業 | タイル、衛生陶器、陶磁器、石工品、陶器、磁器 |
14. 木材* | 合板および木製建材 |
15. プラスチック、合成ゴム | PCV管類、プラスチック、プラスチック・ボトル、容器、各種内科用/外科用、各種家庭用ゴム製品 |
16. 肥料、農薬 | 各種肥料および農薬 |
17. 玩具 | 機械式、電子式、木製、プラスチック製、ゴム製の玩具 |
18. ガス | 各種産業用ガス |
19. 板金加工* | 屋根材、壁材、フェンス材、屋根用トラス、枠材、建具/取り付け材、導管材、貯蔵/運送用コンテナ、その他関連建設材料 |
20. 電気産業機器及び装置の製造* | 電気モーター、発電機、完成タービン発電機、完成エンジン発電機、変圧器、スイッチギア、交換機、整流器、その他電気伝動・配電器、電気の産業用コントローラー例えばモータースターター/コントローラー、電磁クラッチ/ブレーキ、電気溶接装置、およびその他 電気工業装置の製造および改良 |
21. 水上交通への支援サービス* | 水上交通へのあらゆる支援サービス。例えば、埠頭、ドック、その他関連建造物・施設の保守と運用。水先案内。灯台など航海支援施設の保守と運用。船舶への貨物積み荷、荷下ろし。運河の保守と運用。遭難した船舶の救助。船の賃貸借。 |
22. ハラルミート用家畜の屠殺、食肉の調整・保存* | ハラルミート用家畜の屠殺場と食肉包装工場。牛肉、羊肉、ラム肉、家禽肉、ウサギ肉の調整と包装。保存処理、燻製、塩漬け、酢漬け、真空包装、急速冷凍などの処理、包装を含む。ソーセージのケーシング、ハラルミートを使ったスープ、プディング、パイ、ハラルフードの扱いを受ける獣脂の製造も含む。 |
23. 関連する廃棄物処理産業* | 環境製品・サービス。油分を含む廃棄物の処理とリサイクル。有害廃棄物(有機物、無機物とも)の処理。排水の処理と処分。環境ラボサービス。大気汚染防止策その他関連サービス。 |
24. 非金属鉱物製品の製造* | 様々な非金属鉱物製品の製造。例えば、コンクリート、石膏・プラスター製品(生コンを含む)。グラスファイバーの絶縁材。ミネラルウール。スレート製品。切石製品。研磨材。グラファイト製品。シリカ、その他あらゆる非金属鉱物製品(アスベストを除く)。 |
25. ラジオ、テレビ、通信設備・装置類の製造* | ラジオ受信機、テレビ受像機、蓄音器、口述記録器、テープレコーダーを含む音声再生機・レコーディング機器、音盤レコード、録音済み磁器テープ、有線・無線電話/電信装置、ラジオ送信機、テレビ送像機、シグナル伝達、探知装置/機器の製造。レーダー装置の製造および設置。また以下のグループに分類される電子機器専用に使われる部品および用品の製造:半導体と半導体関連の高精度装置、固定電子コンデンサ、可変電子コンデンサ、放射線装置、X線透視装置やその他放射線機器と管類の製造。 |
*は現在、企業向けにすでにパイオニア企業証明書が交付されたもの。
詳細情報の問い合わせ先:
第一次資源産業省 企業促進開発課
Promotion and Facilitation Services
Ministry of Industry and Primary Resources
Jalan Menteri Besar BB3910
Brunei Darussalam
Tel:(673) 238 0022
Fax:(673) 238 2835
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