1. 経済メカニズム:自然経済から市場経済への移行

1975年12月、王制が廃止され、「ラオス人民民主共和国」が樹立した。人民革命党を指導党とするラオス政権は、建国の父カイソーン党議長兼閣僚評議会議長を中心とする指導体制のもと、産業の国営化と集団化を通じて社会主義国家建設を推進してきた。

ラオス版ペレストロイカともいえる本格的な改革は、1986年11月、第4回党大会において、「新経済メカニズム」(New Economic Mechanism—NEM)として公式に確認された。これは、社会・経済全般を対象とした「チンタナカン・マイ」(新思考)と呼ばれる改革を、とくに経済分野に適用したものである。旧ソ連邦による援助が急減していくなかで、国際機関および西側先進諸国による援助が急増を示し、これにより社会主義経済下における自給自足的な自然経済から商品市場経済への総合的な転換を図る経済改革が進められた。

1991年のソ連邦崩壊が社会主義に対する信頼感の喪失を決定づけ、政治面においても、これまでの親ソ・親ベトナム路線を修正し、ベトナムとは「特別な関係」を構築しつつ中国との関係改善、その他近隣諸国との友好関係を基本とする全方位外交を行う方針へと転換した。新経済メカニズム(NEM)のもとで実施されてきた諸改革は、世界銀行やIMFおよびアジア開発銀行による度重なる診断を受け、以下のような処方箋が描かれた(鈴木基義[2002年3月])。

1997年7月のASEAN加盟により、ラオスは地域協力の新しい時代へと突入したが、同月タイを震源とするアジア通貨・金融危機が勃起した。短期資本市場をもたぬラオスまでもが同危機の影響を受けたという紛れもない事実は、奇しくもラオスが地域経済やグローバル・エコノミーのなかに取り込まれていることを証明したが、一方で輸入インフレが発生しようと為替レートが下落しようとも自給自足的な農業が主体的な農村地域では、こうした外生的ショックに対して自然の社会セーフティーネットが機能していることも忘れてはならない事実である。

図表 1 ラオス基礎データ:2008年7月現在

1 国名 ラオス人民民主共和国 the Lao People’s Democratic Republic
2 国土面積 236,800km2 日本の本州に相当
3 人口 572万人(2006年)
4 人口成長率 2.81%
5 人口密度 19人/km2
6 首都 ヴィエンチャン
7 宗教 仏教
8 言語 ラオス語
9 識字率 57%
10 民族構成 低地ラオ族 56% 丘陵地ラオ族 34% 高地ラオ族 9%
11 少数民族数 68種族
12 政体 人民民主共和制
13 国家元首 チュンマリー・サイニャソーン大統領(ラオス人民革命党書記長)
14 議会 国民議会 一院制(99人)
15 首相 ブアソーン・ブッパーヴァン(党政治局員)
16 外相 外相名 トンルン・シースリット(党政治局員、副首相兼任)
17 内政 (1)人民革命党を指導党とするラオス政権は1975年の成立以来一貫してカイソーン党議長を中心とする指導体制が維持されたが、92年11月カイソーン党議長の死去に伴い、カムタイ党議長、ヌーハック前大統領等を中心とする指導体制に。新指導部は、引き続き第4回党大会(1986年)以降党大会の決議に沿った経済面を主とする諸改革の方針を踏襲。
(2)1989年総選挙後の最高人民議会は91年8月の新憲法制定を含む法体系の整備に専念。同憲法に基づき97年12月に第2回国民議会総選挙を実施。
(3)06年3月の第8回党大会において、党による指導的役割を再確認すると共に86年以来の「新改革路線」に基づく改革・解放路線の維持を決議した。
18 外交 (1)平和5原則に基づく全ての国との関係拡大(越とは、「特別な関係」)
(2)特に近隣諸国との友好関係の維持拡大(1997年7月ASEAN加盟)
19 国防 (1)徴兵制
(2)約3万人
(3)国防支出:1,400万ドル(2002年)

(出所)外務省ホームページ等より作成

ラオス在住の邦人数は、2006年7月現在において441人であった。日本大使館館員、JICA職員・専門家・青年海外協力隊等の政府関係者およびその家族が200人、民間企業の社員およびその家族が117人となっている。この2つの合計だけで全体の71.9%を占めており、ラオスにおける民間部門の進出がいかに乏しい状況にあるかを示す証拠となっていよう。ラオス在住の邦人の83%がヴィエンチャンに居住している。ナムトゥンⅡダムの建設のため、西松建設がカムワン県で建設作業を行っている。「研究」に分類された邦人のほとんどがラオス語を学ぶための留学である。

日本人会は1995年に設立され、2008年1月現在で企業会員16社および個人会員258人が加入している。

図表 2 経済メカニズム(NEM)改革骨子

  1. 完全な価格自由化(公共料金を除く)
  2. 米流通の国家独占の終了および農業の自由化
  3. 国有企業改革
  4. 2大税制改革:支出優先事項の再整理(政府職員賃金・給与を除く)。中央予算および地方予算の一般予算への統合
  5. 貿易自由化:関税分類の簡素化。数量制限および輸出入特別許可制度の撤廃。
  6. 複数為替レート制の一本化。公定レートとパラレル為替レートの乖離縮小化。
  7. 中央銀行と商業銀行の分離
  8. 法整備の拡充
  9. 外国直接投資の誘致

(出所)鈴木基義「新経済体制下のラオス」岩波書店『岩波講座東南アジア史第9巻』2002年3月。

図表 3 ラオス在留邦人数(2006年10月現在)

分 類 (単位:人) %
政府関係者 200 45.4
企業関係者 117 26.5
自由業関係者 57 12.9
留学生・研究者等 41 9.3
その他 27 6.1
合計 441 100.0

(出所)在ラオス日本国大使館資料より筆者作成

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