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第4章 労働法規および労使関係

国家賃金評議会

賃金引き上げに関する年次ガイドライン

国家賃金評議会は、1972年2月に政府によって設置されました。その全体的な目的は、長期的なシンガポール経済および社会の発展に即応し、一定の秩序に則した賃金調整を実施することです。

国家賃金評議会は、委員長および政府、雇用主、従業員および労働組合の三者代表によって構成されます。2000年/2001年度の国家賃金評議会は、15 名によって構成され、その内訳は、雇用主代表者5名、労働組合代表者5名、政府代表者5名となっています。

三者代表による同評議会は、以下の目的を果たすための顧問機関として、その役割を果たします:

  1. 雇用主、労働組合および政府による実施を目的とした、年次賃金ガイドラインの策定。
  2. 賃金構造の必要な調整事項の勧告。これによって、事業の発展を促進し、従業員の士気を高め、シンガポールの長期的な経済発展を実現させる。
  3. 市場効率性および生産性の向上、ならびに人材開発を目的とする施策の採用に関する助言。

国家賃金評議会による勧告は、あくまでも目安に過ぎません。当該ガイドラインは、労使間の交渉を実施する一般的な根拠として機能することを意図したもので、柔軟に対応して実施することが奨励されます。実施に際し、何らかの意見の不一致がある場合、雇用主または労働組合のいずれかが、和解を求めて、本件を人材省に申し立てることができます。それでも合意に至らない場合は、調停を求めて、産業仲裁裁判所に申し立てることができます。

国家賃金評議会による勧告は、合意主義の原則に基づいて策定されます。賃金に関する勧告内容を決定するに当たって、国家賃金評議会は、国内経済の成長、生産性の伸び、シンガポールの国際競争力、国内の雇用および失業状況、生産性、単位労働コスト、インフレーション、あらに世界の景気動向などの要素を考慮します。

シンガポール経済は1985年および1986年に景気後退期に入ったため、国家賃金評議会は、企業が再び自らのコスト競争力を回復することを助長するために、1986年および1987年の賃金要求の自制を勧告しました。労働組合は、賃金据え置きの勧告を受け入れました。また労働組合は雇用主による CPF(中央積立基金)の積立率を15%引き下げに応じました。

当地域において発生した経済危機ならびにシンガポール経済の減速を考慮して、国家賃金評議会は、1998年5月に賃金要求の自制を勧告しました。しかし、当地域における景況が引き続き悪化しているため、国家賃金評議会は、1998年9月/10月に新規ガイドラインの策定を目的に、召集されました。同評議会は、雇用主によるCPF積立率の10%引き下げに加えて、1998年の総賃金を1997年と比較して5-8%削減するべきであると勧告しました。業績が著しく上向いている、あるいは逆に著しく悪化している企業は、これらガイドラインから偏向する可能性があります。

国家賃金評議会はさらに1986年に、企業が変動する事業条件により迅速に対応できるように、柔軟性のある制度と改めた場合、現行の賃金制度の厳格さをどのように置き換えることができるかという点について詳細に渡る研究を実施しました。国家賃金評議会賃金制度改革小委員会は、とりわけ、賃金は、職務の価値を反映するべきであり、従ってコスト競争力を維持するためには賃金引上げよりも生産性を重視するべきであること、また賃金の引き上げは、企業業績ならびに個人の勤務実績に準じて認められるべきであると勧告しました。賃金制度の改革についての国家賃金評議会の勧告内容が公表され、広く受け入れられています。目標は、全ての企業が5年以内に柔軟性のある賃金制度を段階的に採用することです。国家賃金評議会は、今後も賃金制度の改革を目指した、国家を代表する総意のための公開討論の場として機能するでしょう。また進捗状況の監視と、さらなるガイドラインの策定も行います。

1988年以降の経済回復に伴い、国家賃金評議会は、賃金に関する勧告を行う際には、経済回復力を考慮するようになりました。賃金引上げに関する勧告は、根本的には、質を重視したものでした。企業は、柔軟性を維持するために、できる限り賃金の変動要素の金額を調整して賃金を支払うよう、強い勧告を受けました。さらに、同評議会は、構造的な賃金引上げよりも、生産性の向上を重視するべきであることを強調しました。

1993年に、国家賃金評議会は、柔軟性のある賃金制度の実施に関して検討を行いました。その結果、柔軟性のある賃金制度が広く採用され、しかも成果を挙げているということが判明しました。企業が採用した、柔軟性のある賃金制度の原理は、信頼性が認められ、いくつかの細かい微調整が加えられて、最終的に賃金制度が整備されました。企業ならびに労働組合は、柔軟性のある賃金制度の導入の目的が出来る限り達成されるように、これら原理を厳格に固守するよう助言を受けました。

1997年/1998年の景気後退により、企業業績に準じて見直される年度末調整項目を含む現行の賃金制度が柔軟である一方で、急激な業績の悪化に対して、より迅速に賃金コストの調整を図れるほど柔軟ではないことが実証されてしまった。従って、企業は、賃金の変動項目の見直しを年度末まで先送りする必要があり、そのため、企業が事業存続能力を持続し、雇用を維持することを助長するには、調整の時期が遅すぎる場合があります。従って、1999年‐2000 年度賃金ガイドラインでは、国家賃金評議会は、賃金制度への月間調整項目(MWC)の導入を勧告しました。これによって企業は、自社の賃金コストを必要に応じてより迅速に調整することができます。賃金コストをより敏感に調整することで、雇用の維持と最大限の解雇回避が助長されます。国家賃金評議会は、さらに、賃金引上げを認める企業は、引き上げ分全額あるいはその大部分を月間調整項目として積み立てるべきであると勧告しています。

ここ数年間では、国家賃金評議会は、1998年以来、勧告内容の適用範囲を拡大しました。
勧告には、従業員の雇用可能性の強化と共同払い込みによる簡易医療給付金制度の導入促進を図るため、定年退職年齢の引き上げ、パートタイム雇用の奨励、柔軟性を持たせた職務の配置、従業員の技能の向上など、労働力のより効果的な活用という内容が含まれています。

国家賃金評議会は、シンガポールにおいて重要な機能を果たす機関です。シンガポールの国際競争力を損なうことなく、労働者に対する実質的な賃金引上げを実現させました。また、政府、雇用主、および労働組合/労働者が、賃金および関連事項に関わるお互いの問題点と期待について理解できるような、有益な公開討論の場を提供しています。さらに、シンガポールでの快適な暮らしにとって極めて重要な分野において、ある程度の条件を満たした解決策の追求を目指し、これら三者が、友好的かつ分別を持って協力しあう機会を提供しています。

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